[P015] 幼児の道徳的判断と「心の理論」との関連
キーワード:道徳的誤信念課題、心の理論、道徳判断
5歳の幼児は行為の意図と動機にもとづいて善悪の判断ができるようになり,その認知的基盤に「心の理論」の獲得があると考えられてきた。一方,他者が勘違いして(誤信念),意図的に他者に被害をもたらすような場面では,5歳児の善悪判断は行為の結果に左右されることも示されており,誤信念の理解が必ずしも道徳的判断を促すのではないことも見出されている。樟本ら(2020a,2020b)は2種類の道徳的誤信念課題を用い,幼児の主人公の誤信念の理解と行為の善悪判断の間に有意な関係はないことを報告した。本研究は,4歳児と5歳児を対象として,2種類の道徳的誤信念課題との関連性,及び幼児期の「心の理論」の測定で用いられてきた誤信念課題の成績と道徳的誤信念との関係を分析することを目的とした。その結果,道徳的誤信念課題の善悪判断とTOM誤信念課題との間に有意な相関係数は認められなかった。