[P117] 学力は社会性とどのように関連するのか?(2)
キーワード:学力、社会性、非認知能力
非認知能力が学力に大きく影響するという主張について,一つの中学校の3年生を対象として実施した3年分の調査結果に基づいて検討した。学力調査の各科目の得点を目的変数として重回帰分析を行ったところ,社会性に関する変数の効果はある程度見られたものの,他の科目の得点を説明変数に加えた場合の決定係数よりもかなり低かった。このことから,学力に対する非認知能力の影響は認められるものの,認知能力の影響を上回るものではないことが示唆された。また,3つの異なる学年集団における偏回帰係数を比較したところ,年度によって有意な変数が異なっていた。このことは,社会性に関する特徴が学年集団の性質と相互作用を起こしていることを示している。どのような社会特性を持つ生徒が高い学力を示すかは,生徒が所属する学年集団の性質によって異なり,学力と関連性の高い社会特性という考え方は不適切であることが示唆された。