[P171] 「書きたくなる」は何によって支えられるか
キーワード:幼児、リテラシー、子どもの声
日本における初期リテラシーのあり方は,正しく文字を読む・書く点に比重が置かれがちである。これに対し,子どもの「声」を引き出し,言葉で自分の思いや考えを表現する基盤を形成するという観点から,幼児期の「書く(描く)」表現のあり方とそれを支える条件を検討した。4-5歳児118名を対象に,研究協力者である大学生45名との間で,日常の保育実践の中に埋め込むかたちで「手紙」のやりとりを展開するアクションリサーチ(以下「ぶんつう」)を試みた結果,次の3点が示唆された。1)学生との「ぶんつう」から「伝え合う」ことへの興味が引き出され,書くことや言葉に対する構えが変化した対象児が多くいた。2)園での友だちや先生との日常の遊びが,対象児の書き表現を引き出す土台となっていた。3)対象児の書き言葉に多く見られた定型的な表現は,言葉で個々の多様な思いや考えを今後発達させるうえでの基盤となる可能性が読み取れた。