一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

講演情報

摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

ライブ

摂食審査ポスターG2

2020年11月7日(土) 08:40 〜 10:30 C会場

[摂食P-10] 中咽頭癌治療後の重度摂食嚥下障害患者に対する経口移行への取り組み

○小池 丈司1 (1. 昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座口腔口腔リハビリテーション医学部門)

【緒言】
 頭頸部癌患者では原発巣の進展度,部位によって治療後に重度の嚥下障害が出現し,経管栄養に依存することも少なくない。当科では従命ならびに訓練の実施が可能で、かつ同居者の協力が得られる重度嚥下障害患者に対し、教育入院を実施し、VF・VE検査に加え連日5回以上の介入を行い、さらに訓練のビデオ記録を行い、退院後の自主リハビリに活用させるという入院プログラムを実施している。今回、中咽頭癌治療後で、治療機関から退院数か月後に経口摂取困難となり経管栄養のみとなった患者に対し、入院加療とその後の外来フォローアップを行い、全量経口摂取が可能となり、経管栄養からの離脱に至った一例を経験したので報告する。
【症例】
 62歳,男性。2015年癌専門病院にて中咽頭癌(T2N1M0)の診断の下、RT(70Gy/35Fr)を施行した。2016年再発により気管切開術、左中咽頭癌切除術、左頸部郭清術、下顎辺縁切除術、腹直筋皮弁による咽頭再建術を施行した。その後経口摂取で退院したが、4か月後頃から嚥下機能が低下し、誤嚥性肺炎により再入院となり、胃瘻造設術を施行した。退院後、当科紹介受診となった。なお,本報告の発表は患者本人より同意を得ている。
【経過】
 摂食嚥下機能のアセスメントを行い、より安全で確実な姿勢調整法の獲得のため入院加療を提案した。入院期間中、直接訓練は左体幹傾斜右頸部回旋姿勢とし、食形態は嚥下調整食2013年学会分類2‐1に相当するものとした。間接訓練はバルーン拡張訓練、シャキアエクササイズ、頸部ストレッチ、開口訓練、徹底した口腔清掃指導を多職種で実施し、介入頻度は1日3回の直接訓練,1日5回の間接訓練とし、4日間で退院した。その後、患者とのラポールを保ちながら外来フォローアップを行い、多職種での介入を継続した。退院3か月後に食形態アップし、さらに退院5か月後には胃瘻栄養併用の常食へと移行した。退院から約2年後に経口摂取のみで60分前後での摂取が可能となり、経管栄養から離脱し得た。
【考察】
 本症例において、全量経口摂取が可能となり、経管栄養から離脱し得たのは、当科介入初期に入院加療を実施し、退院後も患者とのラポールを保ち、アドヒアランスの向上に努めながら適切なリハビリテーションを遂行できたためと考えられた。