The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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症例・施設

[O一般-045] 誤嚥防止手術後の口腔内環境の変化により口腔衛生管理の介助が不要となった2症例

○橋詰 桃代1、野本 亜希子2、大野 友久2 (1. 浜松市リハビリテーション病院 リハビリテーション部、2. 浜松市リハビリテーション病院 歯科)

【目的】
 誤嚥防止手術適応患者は重度摂食嚥下障害があり口腔衛生管理が必要だが,口腔内環境が悪化しやすく実施しにくい場合も多い.今回誤嚥防止手術を施行し,手術前後で口腔内環境が変化し口腔衛生管理の介助が不要となった2症例を経験したので報告する.
【症例の概要と経過】
 症例1は脳梗塞後遺症,上咽頭癌,反復性誤嚥性肺炎の既往があり摂食嚥下リハビリテーション(以下、リハ)目的で入院し誤嚥防止手術を行った67歳男性.放射線治療後で入院時は口腔,咽頭の乾燥が重度で,咽頭に多量の乾燥痰を認めた.口腔清掃は自身で行えていたが,口腔粘膜の清掃は困難で,歯科衛生士と言語聴覚士が毎回約20分介助していた.誤嚥防止手術のひとつである声門閉鎖術施行後,口腔乾燥は軽快し,約10分のセルフケア、介助不要で管理可能となった.手術前後の口腔内に関して,患者の自覚症状をNumerical Rating Scale(NRS)にて評価した.0から10の11段階で「不快感や乾燥感が全く無い」を0「最悪の不快感や乾燥感」を10としたところ,口腔内不快感は手術前7手術後4,乾燥感は手術前9手術後6であった.Oral Health Assessment Tool(OHAT)を用いた評価では,手術前4手術後0であった.
症例2は脳出血後遺症,咽頭癌術後,誤嚥性肺炎の既往があり摂食嚥下リハ目的で入院し誤嚥防止手術を行った85歳男性.入院時は口腔乾燥が重度で軟口蓋への乾燥痰の付着と口腔粘膜の出血を認めた.自身での口腔粘膜清掃は困難であり,歯科衛生士と看護師が毎回約20分介助していた.誤嚥防止手術のひとつである喉頭全摘出手術後,口腔乾燥は軽快し,軟口蓋の乾燥痰も減少し,約7分のセルフケア,介助不要で管理できるようになった.NRSは口腔内不快感が手術前7手術後4,乾燥感が手術前7手術後5であった.OHATは手術前6手術後2であった.
【考察と結論】
 誤嚥防止手術を施行した患者の口腔内環境が手術後に臨床的主観的に軽快した.これは呼吸時の気流が気道から口腔ではなく気管切開孔へ変化したことにより口腔乾燥が軽減され,さらに誤嚥性肺炎を発症しなくなったことと,痰による口腔の汚染が軽減したことが要因と考えられる.声を失うという代償もあるが,誤嚥防止手術の利点のひとつとして,口腔内環境の改善も挙げられることが発見できた.(COI開示:なし)