一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

講演情報

一般演題(口演・誌上開催)

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症例・施設

[O一般-047] 施設入所者が脳梗塞再発後にミールラウンドを通した多職種連携によりADL及びQOLが向上した症例

○亀井 智子1、冨田 健嗣1 (1. 冨田歯科)

【目的】
 平成27年に,介護保険施設入所者の口から食べる楽しみを多職種連携により充実させる取組が評価され「経口維持加算」の見直しが行われた。今回,ミールラウンドを通した多職種連携により脳梗塞再発後のADL及びQOLが向上した1例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 69歳,男性。脳挫傷,症候性てんかんの既往あり。平成30年11月に再発性脳梗塞にて入院時,摂食嚥下障害を認め経口摂取不可のため経鼻経管栄養となったが,リハビリによりとろみ付きで食事摂取可能となりNGチューブ抜去,12月に退院,元の特別養護老人ホームに戻られた。
 施設の食事形態は主食が粥,副食がペースト食提供。最大舌圧14.3KPa,口腔内は全顎歯肉の発赤,ブラッシング時の出血が認められた。食事,水分の摂取で時折ムセが認められた。傾眠傾向があり自発性の低下,軽度のうつ状態で発語が少なく聞き取り不明瞭。平成31年1月よりミールラウンドにリストアップし,本人のQOL向上のため食形態の向上を目指すこととした。口腔内清潔保持の支援を行い,構音訓練を実施,食具,ポジショニングの食環境を整えた。食事形態は副食の形態アップから評価していった結果,主食が粥,パン,副食がきざみへと向上した。おやつはプリンから普通形態へアップ,とろみが中間から軽度となった。
【結果と考察】
 5ヶ月で食事形態の改善,最大舌圧の増加がみられた。各職種から以下のように報告があった。歯科衛生士より全顎の歯肉状態が改善。看護師より退院後の発熱なし。管理栄養士よりBMI19.0kg/m2を維持。言語聴覚士より発語明瞭。また,施設内の行事(秋祭り)において本人希望のアルコール摂取ができた。
 本症例では,多職種の専門分野の関わりからチームとして問題解決にあたったことが食形態の向上及び意欲の引き出しにつながったと考えられた。ADL及びQOLの向上には,ミールラウンドを通した多職種連携により入所者の全体像を把握し改善していくことが重要であると考えた。
(COI開示:なし)