The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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症例・施設

[O一般-048] 関節リウマチに対しトシリズマブを使用中の高齢患者に発症した右側頬部蜂窩織炎の1例

○別府 大嘉繁1、千代 侑香1、森 美由紀1、齊藤 美香1、大鶴 洋2、平野 浩彦1 (1. 東京都健康長寿医療センター、2. 東京都)

【目的】
 トシリズマブ(以下,TCZ)は抗IL-6受容体抗体であり,関節リウマチ(以下,RA)の治療に使用される。TCZはCRPなどの炎症マーカーや発熱などの症状を著明に抑制するため,感染の重篤化を見過ごす可能性がある。今回,TCZ使用中に発症した右側頬部蜂窩織炎を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 71歳,男性。RA(2018年11月よりTCZ開始)の既往あり。2019年7月XX-3日より右側頬部の腫脹と疼痛を自覚,7月XX日に当科を受診した。
〈初診時現症〉
口腔内所見:右側頬粘膜にびまん性の腫脹あり。右側下顎第三大臼歯相当歯肉に発赤,腫脹認めない。
顔貌所見:右側頬部~顎下部にびまん性の腫脹あり。開口障害あり。
CT所見:右側頬部皮下組織および咬筋部に腫脹像を認める。右側下顎第三大臼歯は水平埋伏歯であり歯冠周囲に透過像を認めるが,炎症部位との連続性は認めない。
血液検査値:WBC17,320/µl,CRP6.31mg/dl
〈経過〉
右側頬部蜂窩織炎と診断し,局所麻酔下に右側頬粘膜の消炎術を施行した。化膿性炎治療を目的に即日入院し,スルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウム投与を開始した。膠原病科担当医と協議し,TCZを休薬した。XX+14日目,WBC4,490/µl,CRP0.42mg/dlに改善し,右側頬部の腫脹はほぼ消失した。WBC,CRPの陰性化を確認後も抗菌薬は継続した。 XX+16日目,アモキシシリンに変更,徐々に漸減し,XX+53日目に開口障害の改善を認め抗生剤投与を終了した。XX+164日現在まで,右側頬部腫脹,疼痛の再発はない。
【結果と考察】
 TCZは抗IL-6受容体抗体であり,RA治療薬の重要な選択肢の一つである。IL-6に依存する発熱やCRPなどの検査所見を抑制するため,感染の重篤化を見過ごす可能性がある。TCZ使用患者の感染症に対する治療効果の判定は,血液検査所見のみに頼らず,臨床所見を注意深く評価する必要がある。また,治療を行うにあたっては休薬を含めた投薬医との連携が重要である。
(COI開示:なし)