一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

[摂食更新P-09] 回復期リハビリテーション病棟に入院した左延髄外側脳梗塞に伴う摂食嚥下障害患者への対応

○井関 史子 (独立行政法人国立病院機構東京病院歯科)

【目的】
回復期リハビリテーション病棟に入院したADLほぼ自立で重度嚥下障害のある延髄外側脳梗塞患者への摂食嚥下機能評価と口腔衛生管理を行った症例を報告する。
【症例の概要と処置】
 80歳、男性。高血圧症、脂質異常症の既往あり。2021年X月Y日ふらつき出現、唾液嚥下困難にて前医に救急搬送、左椎骨動脈閉塞・左延髄外側脳梗塞を認め同院脳神経外科入院し保存的加療。途中、誤嚥性肺炎を発症し抗生剤で加療、発症後38日目に当院回復期リハビリテーション病棟に転院。
 転院時は軽度失調と右表在・温痛覚障害はあるがADLはほぼ自立、重度嚥下障害に対し経鼻経管栄養であった。 入院10日目初回VFでゼリー・とろみは喉頭侵入、咽頭残留には頚部回旋で追加嚥下必要(藤島Gr4)。STで直接訓練を継続、入院43日目に経鼻胃管抜去し3食経口摂取(ペースト食)へ。入院59日目2回目VFで喉頭侵入消失、咽頭残留不変(対応も同)、食形態はキザミ食へアップ(藤島Gr7)。入院108日目3回目VFで喉頭侵入・誤嚥は無し、咽頭残留量減少、7分菜食へアップした(藤島Gr8)。
 歯科は入院34日目に右上4FCK動揺(Millerの分類:2度)を主訴に介入開始したが、長年かかっている歯科への信頼から入院中の予防的抜歯は希望せず、歯の動揺が悪化した際に抜歯検討することとし慎重に経過観察した。多量の歯垢付着を認め重度嚥下障害があることから入院中は口腔衛生状態改善を優先、退院時には口腔衛生管理継続と動揺歯の治療検討をかかりつけ歯科に紹介した。
 本報告について患者本人から口頭による同意を得ている。
【結果と考察】
 延髄外側脳梗塞による重度嚥下障害で、経鼻経管栄養を脱した後も咽頭残留が遷延し嚥下食及び頚部回旋・追加嚥下の対応を継続、入院146日目に軟飯・軟菜食・水分トロミなしとなり149日目に自宅退院した。ST訓練、VF、口腔衛生管理により、誤嚥性肺炎再発を予防しつつ食事摂取含む全てのADLが自立かつ日常生活でほぼ不自由無い食形態へ改善し自宅退院できたと考える。
 回復期リハビリテーション病棟入院中は動作の習得・改善を目指すため、ADLほぼ自立で認知機能低下も無い本症例では口腔衛生管理はセルフケアに任され口腔内汚染が放置されていた。摂食嚥下障害患者の口腔衛生管理は摂食機能療法専門歯科医師の重要な役割と考える。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)