一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表8 症例・施設

[P8-10] 脳出血後遺症による左側麻痺の要介護患者に対し歯科訪問診療にて義歯を製作した症例

○堤 康史郎1、柏崎 晴彦2 (1. 医療法人福和会 別府歯科医院、2. 九州大学大学院歯学研究院 口腔顎顔面病態学講座 高齢者歯科学・全身管理歯科学分野)

【目的】
平成30年度版厚生労働白書によると,脳血管疾患の総患者数はおよそ111万5000人で,男女差は殆どない。一方,脳血管疾患を一度発症すると後遺症が残り日常生活に影響を及ぼすことが多く,歯科治療の必要性が健常者より高くなる。今回,脳出血後遺症の要介護患者に対して歯科訪問診療を通して義歯を製作し,良好な経過を得た1例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
61歳の男性。脳出血後遺症,高血圧,糖尿病の既往あり。2019年5月の訪問初診時より残存歯の歯周処置及び義歯調整を行っていた。2020年3月,患者を担当しているケアマネジャーより,上顎の義歯を紛失したため製作して欲しいと依頼され,本人やケアマネジャーに口腔内状況を説明して了承を得た後,開始した。同年4月,義歯製作の際,自身で着脱が困難であったため,上顎残存歯にはめ込む様にマウスピースタイプの義歯を製作した。 2020年5月,新製義歯を調整し使用良好となったため,以降は,歯科衛生士による毎週の口腔衛生管理と歯科医師による隔週の残存部・義歯のチェックを行いながら口腔内環境を維持している。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
義歯製作や調整を通して以前より咬み応えのある食形態が摂取可能となったが,糖尿病に対する食事制限のため, 体重は維持されている。また,本症例を通して,地域歯科医院による歯科訪問診療でも,全身的な既往により義歯の着脱が困難な方に対しても,義歯の形態を工夫して義歯製作を行うことが可能であることが示唆された。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)