一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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口腔機能-3(質疑応答)

2024年6月29日(土) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (大ホールC)

[P-47] 健常若年者における不安定な端座位姿勢と咀嚼能力との関連

○森下 元賀1、藤原 剛太2、難波 夏季2、三宅 大智2、弓場 日和2 (1. 令和健康科学大学 リハビリテーション学部理学療法学科、2. 吉備国際大学 保健医療福祉学部理学療法学科)

【目的】
 咀嚼筋や舌骨上筋群は頭部の保持にも寄与しているために傾斜した姿勢や不安定な姿勢では咀嚼能力が低下する可能性がある。頚部,体幹の筋力が低下した高齢患者において,不安定な端座位姿勢が咀嚼能力とどのように関連するかを明らかにするために,健常若年者で不安定な座位姿勢を取らせて検討した。
【方法】
 対象は健常若年男性10名(平均年齢21.8±0.4歳)とした。課題は足底不接地の端座位(端座位条件)と左右に不安定なシーソー状の座面での足底不接地の端座位(不安定座位条件)でタフグミ(Kabaya社製)を咀嚼して嚥下するまでの筋活動と咀嚼回数を比較した。筋活動は咬筋の筋電図によって計測した。筋収縮力の解析は咀嚼前に最大の力で噛み締めを行い,各咀嚼相の積分値を求めた。咀嚼開始から5回の各咀嚼相の筋電図波形が最大噛み締めのどの程度の割合にあたるかを求めるとともに,各咀嚼相の筋収縮時間を求め,5回の平均値を算出した。また,咀嚼してから嚥下するまでの咀嚼回数を筋電図波形から求めた。統計学的解析は端座位条件と不安定座位条件で,筋積分値の割合,筋収縮時間,咀嚼回数を対応のあるt検定で求めた。統計学的解析はIBM SPSS ver.25.0によって実施した。
【結果と考察】
 咀嚼時の平均筋収縮力は,端座位条件が125.0±61.9%,不安定座位条件が108.0± 37.7%と有意な差がみられなかった。咀嚼時の平均筋収縮時間も端座位条件0.43±0.08秒,不安定座位条件が0.42±0.08秒と有意な差はみられなかった。咀嚼回数は,端座位条件が46.7±21.8回,不安定座位条件が53.2±20.6回であり,不安定座位条件のほうが有意に多かった(p<0.01)。この結果より,健常若年者においては不安定な端座位では筋収縮力,筋収縮時間には変化がないものの,咀嚼回数は多くなり,嚥下までの時間が長くなることが明らかになった。このことは,十分なポジショニングがなされていない高齢患者においては,口腔期の舌,顎関節運動の非効率化によって食塊形成に影響を与える可能性を示している。そのため,高齢患者において咀嚼,嚥下機能の向上を図るためには,口腔機能の向上だけでなく,頚部,体幹機能の強化や姿勢の安定化が必要となることが示された。
(COI開示:なし)
(吉備国際大学 倫理審査委員会承認番号 22-38)