第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY12] 集中治療室の安楽の確保に向けた環境を考える

Sun. Jun 12, 2022 1:20 PM - 2:50 PM 第9会場 (総合展示場 F展示場)

座長:芝田 里花(日本赤十字社和歌山医療センター)
   河原崎 純(済生会横浜市南部病院)
   田口 豊恵(京都看護大学 看護学部)
   花山 昌浩(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター)
   坂木 孝輔(東京慈恵会医科大学附属病院)
   村野 大雅(パラマウントベッド株式会社)

2:10 PM - 2:30 PM

[SY12-03] 集中治療室において家族の面会が急性・重症患者の安楽に与える影響とSynergy modelを用いた看護実践

○坂木 孝輔1 (1. 東京慈恵会医科大学附属病院)

Keywords:家族面会、Synergy model

集中治療室において看護が必要とされる患者は、生命が脅かされる健康問題が生じるリスクが高く、脆弱で複雑になりやすいという特徴がある。集中治療の従来の目的は短期の死亡率を減らすことであり、患者が過ごしやすいようにではなく、医療者が働きやすいようにつくられてきた背景がある。そのため、患者にとって安楽な環境を作るには多くの配慮が必要となり、患者の視点で物事を捉えることが重要である。集中治療室で人工呼吸器管理を受けた患者の不快な経験は、医療者の価値観の欠如やプライドを傷つけられること、無視、物として扱われること、非全人的ケアでなどがある1)。集中治療後の患者は、集中治療室退室後も不安や抑うつ症状が継続し、その割合は一般的な治療後の不安・抑うつ発症率よりも高いとされている。
また、集中治療室において、患者は家族や社会と隔絶された環境にある。集中治療室における家族の面会に関するシステマティックレビューでは、柔軟な面会によって、患者の不安が軽減することや、患者と家族の満足度が向上することが示唆されている2)。しかし、COVID-19の流行に伴い、多くの病院で面会が禁止されている現状がある。重症患者の家族のニーズに関する報告では、家族が優先するニーズは、情報、保証、接近であることが示されている3)。従来、家族の面会を通して看護師と家族の直接的な対話やケアへの参加が、信頼関係の構築やニーズの充足に繋がっていた。しかし、面会が制限されることでこれらのニーズが満たされにくい環境となっている。
このように、集中治療の分野では、患者中心のケアが難しくなりやすい。米国クリティカルケア看護協会(AACN)は、看護師と患者の相互作用に注目してAACN Synergy model for Patient Care(以下、Synergy model)という中範囲理論を開発している。特定の患者とその家族のニーズや特性と、看護師の能力を調和させることで、相乗効果(シナジー)が起こり、技術的で非人間的になりがちな集中治療室という環境を、人間的な癒しの場へと変えることができたという報告がある4)
今回、Synergy modelの枠組みを用いた看護実践により、患者の安楽と家族の満足が向上し、看護チームの成長につながった事例を報告する。多様な患者と家族の特性に調和した実践を行うことで、技術的で非人間的になりがちな環境を、人間的な癒しの場へと変えていく提案をしたい。

文献
1. Samuelson, K. Unpleasant and pleasant memories of intensive care in adult mechanically ventilated patients--findings from 250 interviews. Intensive and Critical Care Nursing. 2011;27(2):76-84.
2. Paulo A, et al. Flexible Versus Restrictive Visiting Policies in ICUs: A Systematic Review and Meta-Analysis. Crit Care Med. 2018;46(7):1175-1180.
3. Leske JS. Internal psychometric properties of the Critical Care Family Needs Inventory. Heart Lung. 1991:20(3):236-44.
4. Kelleher, S. Providing patient-centered care in an intensive care unit. Nursing Standard.2006;21(13):35-40.