第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

終末期・グリーフケア

[O15] O15群 終末期・グリーフケア

2019年10月5日(土) 10:10 〜 11:00 第6会場 (3F 中会議室303)

座長:岩崎 利恵(宮崎県立宮崎病院 ICU)

[O15-4] 集中治療室で死にゆく患者の家族の悲嘆への看護実践

米村 亮1, 大江 理英2, 北村 愛子2 (1.堺市立総合医療センター, 2.大阪府立大学大学院看護学研究科)

【目的】ICUでは、救命を目的として集中的に治療が行われるが、終末期を迎える患者も存在し、家族が患者を喪失する悲嘆を表出できる援助の必要性が示されている。しかし、ICUでの死は短期間で訪れ、看護師と家族の関係も終了してしまう。そのため、積極的に患者家族のニーズの充足に努めることが求められる。家族が十分に悲嘆を表出できなければ、身体疾患の増加、QOL低下、複雑性悲嘆の発症に影響するとされている。しかし、家族の悲嘆への十分な介入が行われていないことが指摘されており、ICUで死にゆく患者の家族の悲嘆への具体的な看護実践は明らかにされていない。本研究の目的は、看護師が認識しているICUで死にゆく患者の家族の悲嘆への看護実践の内容を分析し、具体的な看護実践を明らかにすることである。
【方法】研究デザイン:質的記述的研究。研究方法:半構造化面接。研究対象:ICUで死にゆく患者の家族の悲嘆への看護実践の経験がある、ICUに5年以上勤務する看護師10名程度。データ収集期間:2018年9月から12月。分析方法:逐語録の内容からコードを抽出し、コードの特徴が損なわれないよう相互の類似性と相違性に沿って分類し、サブカテゴリ化し、カテゴリへ高次化した。倫理的配慮:大阪府立大学大学院看護学研究科研究倫理委員会の審査を受け承認を得た。
【結果】5施設の看護師11名から同意を得た。平均ICU勤務年数は7.9年であった。ICUで死にゆく患者の家族の悲嘆のアセスメントでは『悲しみが表現されない家族にケアを始める機会をアセスメントする』、『家族の悲しみの様相を判断する』、『家族の関係性をアセスメントする』、『家族の日常生活をアセスメントする』ことが明らかになった。看護介入では、『家族の悲嘆感情とともに存在する』、『家族の心情を積極的に傾聴する』、『患者に向き合うための家族のケアリングを支える』、『家族の対処を促進する』、『患者と家族だけの場をつくる』、『時間とともに変化する患者と家族の存在を支える』、『他職種と協働する』、『患者の身体の整容にこだわる』、『患者が死を迎える時の心理的な準備をする』ことが明らかになった。評価では、『家族の言動から悲嘆反応の変化を評価する』、『家族が悲嘆作業に取り組めていることを評価する』ことが明らかになった。
【考察】ICUの看護師は、ICUで死にゆく患者と家族の情緒的な絆を強めるために、『家族の関係性をアセスメントする』ことで、『患者と家族だけの場をつくる』、『家族の対処を促進する』看護実践を行っていたと考えられる。また、家族の患者を喪失することの受け止めを進めるために、『時間とともに変化する患者と家族の存在を支える』看護実践を行っていたと考えられる。そして、患者のために何かしたいという家族の思いを実現し、死別後も記憶に留めることができるように、『患者に向き合うための家族のケアリングを支える』看護実践を行っていたと考えられる。さらに、『家族が悲嘆作業に取り組めていることを評価する』こと、『家族の言動から悲嘆反応の変化を評価する』ことで、家族の情緒的な絆の強化、最期の時間の過ごし方を指標として、死別の時までの看護実践の評価を行っているものと考えられる。よって、ICUで死にゆく患者の家族の悲嘆への看護実践は、患者と死別後の悲嘆を家族が乗り越えるための、家族の準備性を高める看護実践であると考えられる。今後は、本研究の結果から明瞭となった、ICUで死にゆく患者の家族の悲嘆への看護実践について検討する機会を設け、看護師への教育を行う必要性が示唆された。