第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

トリアージ

[O20] O20群 トリアージ②

2019年10月5日(土) 09:00 〜 10:00 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:中嶋 康広(東海大学 看護師キャリア支援センター)

[O20-4] 院内トリアージのフィードバックの有効性について

中村 剛人, 石﨑 清華, 小坂 裕太 (東海大学医学部付属八王子病院救急センター)

Ⅰ.はじめに A病院では2015年6月より院内トリアージが開始され、看護師が医師の診察前に患者の症状やバイタルサインから緊急度判断を行い、診察までの優先順位や待機場所を選定している。しかし、トリアージナースによって救急医療の経験や知識に個人差があり、トリアージナースへの教育も不十分であるため、緊急度判断は個々の能力によって差が生じている。そのため、トリアージ記録をJTASのインストラクターが「記録の正確さ」、「時間管理」、「緊急度判断の整合性」、「バイタルサインや観察項目の不足」、「初期対応」の5つの項目でチェックしている。さらにトリアージ記録に修正点や改善点などを指摘した内容を記入し、トリアージナース個人に返却し、個々にフィードバックできるようにしている。そこでA病院において、トリアージ記録のトリアージナース個人へのフィードバックは有効であるか調査を行った。
Ⅱ.研究目的 トリアージ記録での記録チェック5つの項目について、フィードバック前と後で、記録の指摘される割合が変化しているかを調査する。またトリアージナースを対象としたアンケートを行い、個人へのフィードバックが役に立っているかを調査し、記録チェックと個人へのフィードバックが有効であるかを明らかにする
Ⅲ.研究方法 研究期間はフィードバック前:2016年4月1日~2016年9月30日、フィードバック後:2017年4月1日~2017年9月30日。研究対象者は救急センターのトリアージナース全30名とした。研究方法は自記式質問紙(選択回答式)を用いた量的研究とし、後日回収する留置法とした。倫理的配慮については、調査実施施設臨床研究審査委員会の倫理審査の承認を得た上で実施している。
Ⅳ.結果 トリアージ記録の記録チェックは全体で3559件、フィードバック前1022件、フィードバック後2537件であった。「記録の正確さ」はフィードバック前で24.9%、フィードバック後では21.6%の指摘があった。「時間管理」についてはフィードバック前で18.7%、フィードバック後では13.8%、「緊急度判定の整合性」はフィードバック前10.1%、フィードバック後では7.4%の指摘であった。「バイタルサインや観察項目の不足」はフィードバック前で48.0%、フィードバック後は17.3%、「初期対応」はフィードバック前で6.3%、フィードバック後は7.0%の指摘があった。2.アンケートの回収率は30名中20件で66.6%であり「フィードバックの実施は有効であった」や「緊急度判断の参考になる」の質問について「とてもそう思う」、「そう思う」が20名中18名と多数の回答が得られた。
Ⅳ.考察 トリアージ記録のチェックの4項目においてフィードバック後の方が指摘が少なくなっており、トリアージナース個人への記録のフィードバックが有効であったといえる。また、「緊急度判断の正誤性」においても改善しており、アンケート結果からもフィードバックがトリアージナースにとって、緊急度判断の参考になっており、緊急度判断の精度が向上していると考えられる。これは、救急外来での患者の来院から医師の診療までの待機時間において、患者の安全や安心に繋がると考えられる。医師の診療までの待機時間は、トリアージナースにとって安全管理といった重要な役割を担っている。また緊急度判断はその過程、システムにおいて、看護師の能力が問われる現場となるため、トリアージナースの教育は院内トリアージの質向上のために、トリアージ記録のチェックや個人への記録のフィードバックは継続していく必要がある。