第6回日本在宅医療連合学会大会

講演情報

シンポジウム

09-2:異分野・異業種連携

シンポジウム10:異業種の視座から “喪失” を分かちあい多様性を包摂するコミュニティを考える

2024年7月20日(土) 10:10 〜 11:40 第9会場 (会議室104)

座長:大川 薫(亀田総合病院)、上村 久美子(居宅介護支援事業所万年青)

10:10 〜 10:30

[S10-1] 認知症になったとしても活躍できる社会をつくる

*平井 万紀子1 (1. まあいいかlaboきょうと)

・関西外国語短期大学卒
・松下電器産業株式会社(現Panasonic)入社。約6年間 勤務したのち、結婚を機に退職。
・フリーとして、営業・取材・企画・編集・講演会主催等、さまざまな業種・仕事を経験。
・34歳、39歳で出産、2児の母となる。
・2014年 認知症と診断された母と同居スタート。
認知症の人がホールスタッフをつとめる「注文をまちがえる料理店」の存在を知り、インスパイアされ、2018年3月~地元京都を中心に、希望された地域において「注文をまちがえるリストランテ」「まあいいかcafé」を主宰。
当初 認知症を抱えた母ひとり 娘ひとりからスタートした活動が共感と応援を呼び、これまでの6年間で計31回開催。
開催実店舗22店舗。開催地域14地域。認知症を抱えたホールスタッフ160名以上。ボランティア500名以上。来店者2,500名以上を超える活動を行っている。(延べ人数)
背景:認知症と診断された母との同居がきっかけで、その母が「働きたい!まだまだ私は働ける」と言い続けたことから、認知症になったとしても「できなくなったことはあるけれど、できることもある」ということに気付き、「認知症になれば100%介護される人、何もできなくなる人」という思い込みが一変したことがはじまり。
また、人は年齢を重ねていっても、やりたいことをやることが一番の特効薬だと思い、母のやりたいこと=「働くこと」を通して社会とつながることで生きがいをもって生きてほしいと思ったことが背景にある。

目的:人は、「人の役に立つこと・人から必要とされること・互いに貢献しあうこと」で力を発揮する。
認知症であることが人生の終わりではない。
「認知症の人」ではなく、「病気として、一つ、認知症を持っている人」という認識を広げていくことが目的。

方法:「注文をまちがえる料理店」という認知症を抱えた人がホールスタッフを勤めるイベントをモデルとし、「働きたい、まだまだ働ける、人の役に立ちたい」と言い続けた母と「まあいいかcafé」「注文をまちがえるリストランテ」を各地域に住まう認知症を抱えた人とその家族、施設、行政、地域包括支援センター、社会福祉協議会、商店街、お店、学校、病院等とつながり、地域のさまざまなコミュニティと共に開催する。

結果:多くの応援と共感をいただき、現在、7年目でこの活動を続けている。ご家族や施設からは、一人歩行できなかった働く当事者が、人と関わることで生き生きと歩行される姿を見て、涙し、大きな喜びを感じられている。また、それが来店者の心までも勇気づける結果となっている。

結論:「できなくなったこともあるけれど、できることもたくさんある」ということを証明している。
私たち社会の側が「まあいいか」と受容することで、問題ではなくなることも実はたくさんある。そういった想いを都度、届けることができ、それぞれの社会生活に生かされてる。