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[O-2-19] ムコ多糖症Ⅱ型患者の在宅医療における酵素補充療法についての現状と課題
【はじめに】ムコ多糖症Ⅱ型の治療には酵素補充療法が根治的治療の一つとされており、2021年3月厚生労働省より酵素製剤の在宅使用が認められた。今回、ムコ多糖症Ⅱ型に対する酵素補充療法を在宅で開始したため、その現状および課題を報告する。また、酵素補充療法の特徴として治療薬が高価であり在宅での使用に際して医療機関にとってコスト面で大きいリスクを伴う。この問題を解決するため薬剤の卸売企業と連携しライソゾーム病治療薬の個宅配送を可能とするオペレーションを組み実践した。【症例】症例は19歳男性。生後11ヶ月でムコ多糖症II型と診断され、4歳から酵素補充療法を開始した。以降週に1回の酵素補充療法を小児科外来で通院または1泊入院で継続していた。17歳時に酵素製剤の在宅使用が認可され、当院紹介となり在宅での酵素補充療法開始となった。病院の主治医・看護師・地域連携室と退院前カンファレンスを複数回行い準備した。当院介入開始後、週1回の酵素補充療法を通院・在宅で交互に行い、これまで計80回在宅で酵素補充療法を行った。経過中、関連する副作用やトラブルは認めなかった。治療薬の個宅配送はトライアルを開始しこれまで計34回行い、こちらもトラブルは認めなかった。【考察】希少疾患の在宅での治療は、医師も含めてスタッフが専門的知識を持ち合わせていないケースが多く受け入れに際してのハードルは非常に高い。知識面・技術的・コスト面の問題など課題は多岐に渡るが、主治医とクリニックで連携を組み事前に入念な準備をすることで、酵素補充療法を在宅で安全に行うことが出来た。通院頻度を減らすことで家族の負担軽減となるが、管理料や持ち出し物品の問題など今後の課題も残る。また、ライソゾーム病治療薬の個宅配送は在宅医療を担う医療機関のコスト面でのリスク回避となるため、在宅での酵素補充療法の普及に強く寄与すると考えられる。