第6回日本在宅医療連合学会大会

講演情報

ポスター

13-3:がん

一般演題(ポスター)がん1

2024年7月21日(日) 09:25 〜 10:00 ポスター会場3 (コンベンションホールA)

座長:小森 栄作(ももたろう往診クリニック)

09:45 〜 09:50

[P-2-100] 肺癌胸壁浸潤による難治性疼痛に対して、くも膜下ポートを造設し約3か月の自宅療養ができた症例

*佐野 広美1、雪田 慎二1、畔柳 綾2、井坂 晋3、吉武 勇3 (1. 埼玉協同病院 緩和ケア内科、2. 埼玉協同病院 麻酔科ペインクリニック、3. ゆずな内科在宅クリニック)

【はじめに】くも膜下鎮痛法は難治性がん疼痛に効果的な治療法である一方、実施医が少ない、対応可能な在宅医療機関が少ないなどの問題がある。難治性疼痛に対しくも膜下鎮痛法を実施、在宅医との連携にて約3か月の自宅療養ができた症例を経験したので報告する。報告に当たり日本医学会連合研究倫理委員会指針「5.1症例報告」に記載された対応をとっている。【症例】80歳台男性、202X年1月に肺癌術後の胸壁再発による右背部痛にて当院ペインクリニックを受診した。疼痛は経時的に増悪、肋間神経ブロック、オキシコドンからメサドンへの変更・増量でも十分な効果を得られない難治性疼痛であった。10月メサドン90mg/日まで増量してもレスキューを1日10回以上使用するようになり、くも膜下鎮痛を計画、PS1、月単位の予後が期待できたのでくも膜下ポートを造設した。実施後の鎮痛効果は良好、くも膜下へのモルヒネ投与量は2.4mg/日、全身投与はメサドン30mg/日まで減量でき、突出痛に対してはくも膜下ポートのレスキューで対応した。処置は一般病棟で、第4病日より緩和ケア病棟で退院調整を行った。訪問診療は5施設に打診し1施設で対応可能であった。看護・介護職がくも膜下ポート未経験であり、コロナ禍ではあったが対面で多職種による退院前カンファレンスを開催した。退院後はご自宅で穏やかに過ごされ、くも膜下ポート造設から91日目に自宅看取りとなった。発表に関してはご遺族より口頭で同意を得た。【考察】当緩和ケア病棟では直近の2年間で難治性がん疼痛5症例にくも膜下鎮痛法を実施、うち4例が自宅退院、自宅看取りとなった。4症例のポート造設後看取りまでの期間は21日から91日で、本症例が最も長期に生存した症例である。連携在宅医療機関は3施設であった。在宅での対応困難な理由として処方箋を発行できない麻酔薬の対応、看護・介護職の経験不足が挙がった。