第6回日本在宅医療連合学会大会

講演情報

ポスター

15-1:緩和ケア

一般演題(ポスター)緩和ケア2

2024年7月21日(日) 14:25 〜 14:55 ポスター会場3 (コンベンションホールA)

座長:岡山 容子(医療法人みのり会 おかやま在宅クリニック)

14:30 〜 14:35

[P-2-125] 吐き気の強いメサドンをフェンタニル貼付剤へ在宅でスイッチを試みた1例

*岡本 静子1 (1. 医療法人社団そよかぜ)

【はじめに】在宅にてメサドンに起因する嘔気で苦しむ患者に、逆方向となるオピオイドスイッチングであるが、やむを得ずフェンタニル貼付剤にスイッチしADLが改善された経験を得たので報告する。日本医学会の倫理的指針に則り個人情報に配慮した。
【症例】67歳男性、末期浸潤性膀胱がん術後再発。リンパ節転移、骨転移あり。入院中にオキシコンチン40mgをメサドン15mgに変更投与された。退院時は嘔気強く制吐剤も数種類投与されていたが、経口摂取できない状態であった。在宅導入時から嘔気の可能性のある薬を中止しステロイドも増量したが、嘔気は改善せず。やがて衰弱が進み内服もできない状態になった。左に腎瘻、右下腹部には尿管瘻があるため、さらに管が増えるモルヒネ持続皮下注はADLを阻害すると考え、メサドン投与前のオキシコンチンの投与量から推測し、フェンタニル貼付剤へのスイッチングは可能であると判断した。貼付剤への変更後、嘔気は消失し、鎮痛も良好で経口摂取も可能となり、テレビを見て冗談を言って笑うこともでき、良好な終末期を過ごすことができた。
【考察】メサドンは経口麻薬の最終手段である。いずれ内服不能となればモルヒネ持続皮下注や貼付剤への切り替えが必要である。意識が明瞭な状態で、嘔気さえコントロールできればADLの改善が見込める患者であるため、麻薬の変更としては逆方向となるスイッチングを行った。メサドンは血中半減期が22~48時間。メサドン内服困難になった時の鎮痛対応や他の鎮痛薬への変換比率については文献が乏しい。強度の疼痛が出てから他の麻薬を投与すると交差耐性が不完全であるため過量投与となる恐れもある。ミダゾラムを併用しつつフェンタニル貼付剤Tmax18-26時間を念頭におきスイッチし、穏やかに終末期を過ごせた。メサドンは早期の変更では副作用に苦しめられる可能性が示唆された症例と考えたため報告する。