一般社団法人日本鉱物科学会2021年年会・総会

講演情報

口頭講演

S1, S4:火成作用及びプレート収束域の物質科学合同セッション

2021年9月17日(金) 14:00 〜 16:45 Zoom Session 3

座長:DYUTI PRAKASH SARKAR(広島大)、浜田 盛久(海洋研究開発機構)

14:00 〜 14:30

[S1,S4-01] 紀伊半島下のゆっくりすべり,スラブ内地震と内陸地震

*北 佐枝子1、ヒューストン ハイジ2、矢部 優3、田中 佐千子4、浅野 陽一4、澁谷 拓郎5、須田 直樹6 (1. 建築研・国地、2. 南カリフォルニア大、3. 産総研、4. 防災科研、5. 京大防災研、6. 広大・院理)

キーワード:ゆっくりすべり(スロー地震)、スラブ内地震、応力場、石英脈、b値

紀伊半島下では,継続時間が1週間程度で繰り返し周期6ヶ月程度の短期的スロースリップイベントと呼ばれる地殻変動現象が,深さ30-40km程度のプレート境界にて発生している.本研究では,このスロースリップイベント(ETS)発生前後のスラブ内地震の観測データ,約17年分の時間変化を調べた.すると,1) ETS発生前後でのスラブ内の応力軸の変化を捉えられ,さらに応力軸の変化がETS発生域直下(5度)と比べ,より浅部の領域で大きいこと(12度)を見出した.また,その浅部の領域でも,ETS後に別のゆっくりすべりを示唆する地震活動が見られた.これらの結果は,測地学的研究で報告のあるETS後の浅部でのゆっくりすべりを,地震データ解析でも検出可能なことを意味する.また2)ETS発生の約1ヶ月前にスラブ内地震のb値のピーク及び発生個数の急激な上昇が見られた.これらの特徴は,流体注入による誘発地震の特徴に似ており,スラブ内からプレート境界への流体の流入により,ETSが発生すると考えられる. ETSの発生には石英脈形成プロセスとの関与が地質学的研究で指摘されており,上記の応力軸の回転と関わる可能性も考えられる.