一般社団法人日本鉱物科学会2021年年会・総会

講演情報

口頭講演

S1, S4:火成作用及びプレート収束域の物質科学合同セッション

2021年9月17日(金) 14:00 〜 16:45 Zoom Session 3

座長:DYUTI PRAKASH SARKAR(広島大)、浜田 盛久(海洋研究開発機構)

16:30 〜 16:45

[S1,S4-09] 火道上昇履歴に応じた石基輝石晶相変化の実験的検証

「発表賞エントリー」

*奥村 翔太1、奥村 聡2、三宅 亮1 (1. 京都大・院理、2. 東北大・院理)

キーワード:輝石、晶相、減圧実験、桜島火山

噴火様式分岐条件の理解に重要なマグマ上昇履歴は、噴火噴出物の岩石組織に記録されている。天然の軽石試料の観察から、我々は石基輝石結晶の晶相(結晶面の組合せ)が上昇に伴う過冷却度の指標になりうることを見出したが、その実験的検証は未だ行われていなかった。そこで本研究では、桜島大正軽石とそれらを完全溶融させた均質なガラスの2種類を出発物質として、外熱式水熱合成装置による減圧結晶化実験を行い、回収物の石基輝石晶相を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、過冷却度が大きくなるにつれて晶相が八角柱⇒六角柱⇒四角柱へ変化することが確認された。この結果は、結晶に乏しく四角柱が特徴的な桜島軽石のほうが、結晶に富み六角柱が特徴的な軽石よりも過冷却度が高かったことを示唆し、マグマ上昇速度の違いに言及した先行研究を実証した。一方、天然試料で確認された四角柱の晶相は、溶融ガラスでないと再現できなかった。このことは、大正噴火の一部のマグマが、石基結晶に極めて乏しい均質なメルトの状態から一気に上昇したことを示唆する。石基輝石晶相は、火道での停滞のような複雑な上昇履歴を制約する手掛かりにもなることが期待される。