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[R1-P-06] 熊本県美里町払川から見出されたゲルマニウムを含む白金族鉱物の新鉱物・三千年鉱
キーワード：三千年鉱、ゲルマニウム、白金族鉱物、合成実験、熊本
Michitoshiite-(Cu)（三千年鉱）は，熊本県美里町払川から発見されたGeを含む白金族鉱物（PGM）の新鉱物である．この新鉱物は，かつて資源としてのGeに注目し，九州産のGe含有鉱物を研究していた経歴を持ち，日本の鉱物学，岩石学，応用地質学の発展に大きく貢献した愛媛大学元教授の宮久三千年（1928-1983）に敬意を表して命名された．鉱物および名称はIMAの新鉱物・鉱物・命名委員会から新鉱物として承認を受けた（IMA2019-029a）．Michitoshiite-(Cu)が見出された砂白金鉱床は，単斜輝石岩体を横切る小河川から見出された（Nishio-Hamane et al., 2019）．ほぼ全ての砂白金粒子はisoferroplatinumを主体としている．Isoferroplatinumを主体とする粒子は，多様な鉱物を包有するほか，表面にコブ状のPGM集合体を伴う．このコブ状のPGM集合体は，erlichmanite，laurite，cuprorhodsite，ferrotorryweiseriteなどからなり，稀にmichitoshiite-(Cu)やshiranuiiteが伴われる．Michitoshiite-(Cu)は，コブの外側に認められることが多いが，稀にコブ内部の構成物としても産する．Michitoshiite-(Cu)がコブ内部の構成物として見られる場合は，cuprorhodsiteやferrotorryweiseriteの集合体を横切る亀裂に沿って発達する場合，また，それらと密に混合して層状にコントラストを形成する場合などがある．Cuprorhodsiteをベースとするコブは，bowieiteが変質を被ることで形成されることが判明しており（Nishio-Hamane et al., 2024），形成反応は定かでないもののferrotorryweiseriteをベースとするコブもまた同様だと推測される．ただし，isoferroplatinumの粒に含まれるbowieiteやkingstoniteなどの初生のRh鉱物にはGeが含まれていないことから，michitoshiite-(Cu)に含まれるGeは変質の際にもたらされた元素である．Michitoshiite-(Cu)は，肉眼的には不透明で金属光沢を呈し，銀灰色である．反射顕微鏡下では，褐色を帯びた淡灰色を呈し，多色性及び異方性は認められない．モース硬度は5，経験式と粉末X線回折（XRD）データから計算された密度は10.78 g/cm3．経験式は2apfuとして計算され，(Rh0.95Pt0.03Ir0.01)Σ0.99[(Cu0.36Fe0.24)Σ0.60Ge0.41]Σ1.01である．粉末XRDパターンは，強い5つのピーク[d in Å (I/I0) hkl]，2.103 (100) 110，1.717 (3) 111，1.487 (15) 200，1.332 (6) 210， 1.216 (70) 211を示し，格子定数a=2.9771(11)Å，V=26.39(3)Å3 (Z=1)の立方晶Pm-3m ( #221)であった．先行研究から，RhCu-RhFe-RhGe系では，RhCuは面心立方（fcc）型構造，RhFeはCsCl型構造，RhGeはMnP型構造と，それぞれの端成分が，異なる構造を持つが，固溶体の構造については検討されていない．特に，RhFeで見られるCsCl型構造は，固溶体の組成によって無秩序なbcc 型構造から完全秩序なホイスラー型構造に派生する可能性がある．しかし，天然の試料は非常に限られており，これらを検討することは不可能であるため，合成実験によってこの問題に対処した．天然試料の経験式を模して合成されたRh[(Cu0.35Fe0.25)Σ0.60Ge0.40]がCsCl型構造であったことから，michitoshiite-(Cu)の結晶構造はCsCl型だと考えられる．また，合成実験において，Rh(Cu,Fe)組成の合成物が，bccベースの結晶構造ではなく，寧ろfcc 構造であったことを考慮すると，Geの存在は，bccベースの結晶構造を形成するために必須であると考えられる．従って，その他の合成物質の挙動から得られた組成と結晶構造の関係から，michitoshiite-(Cu)の理想式はRh(Cu1-xGex) 0 < x ≤ 0.5となる．
