12:30 〜 14:00
[R1-P-13] 鹿児島県大和鉱山産arsenmedaite
キーワード:砒メダ石、大和鉱山
鹿児島県奄美大島に位置する大和鉱山は原田石(Watanabe et al., 1982)の模式地として知られる他、ロスコー雲母(吉村・桃井, 1964)、灰バナジンざくろ石(Momoi, 1964)、ティラガロ石(中尾ら, 2005)、パレンツォーナ石、ナビアス石、東京石及びボーレライネン石(山田ら, 2008)、メダ石及びサネロ石(松原ら, 2013)、ポピー石(丹羽・石橋, 2015)、レッピア石(山田ら, 2018)等の含V-As鉱物の産出が確認されている。筆者らが当地から2018年に採集した珪質マンガン鉱を検討した結果、新たに本邦初産となるarsenmedaite(砒メダ石)を見出したため報告する。
砒メダ石はメダ石(medaite)のV5+をAs5+で置換した鉱物で、イタリア北部アペニン帯の変成チャートに胚胎されるマンガン鉱床から報告された(Biagioni et al., 2019)。模式地ではブラウン鉱を切る石英脈中に最大200 μmの赤橙色の柱状結晶として産し、方解石、Asに富むメダ石、菱マンガン鉱、滑石、ガノフィル石と共生する。
砒メダ石を見出した大和鉱山の珪質マンガン鉱は主に緻密なハウスマン鉱、菱マンガン鉱、粗粒のばら輝石から構成される。砒メダ石は菱マンガン鉱やばら輝石中に最大径1 mm以下の黄色~赤橙色粒状結晶として産出しガラス光沢を呈する。大和鉱山産砒メダ石はばら輝石と密接に共生してメダ石を伴わない点で、模式地のものと産状が異なる。
SEM-EDSによる質量分析の結果はSiO2 30.12, CaO 0.99, V2O5 3.25, MnO 48.03, As2O5 13.26, H2Ocalc. 1.01, 合計96.65 wt%を得た。MnをすべてMn2+と仮定してO = 18で規格化した場合の実験式は、(Mn2+6.04Ca0.16)Σ6.20 [(As1.03V0.32)Σ1.35Si4.47]5.82O18(OH)である。砒メダ石の理想組成式Mn2+6 As5+Si5O18(OH)と比較するとAs-Vがやや過剰でSiが少ないことから、Si四面体骨格の一部をAs-Vが置換しているものと推測される。
ラマン分光分析の結果、340–360, 994 cm-1に弱いピーク、644, 658 cm-1に中程度のピーク、859, 879, 894 cm-1に強いピークが検出された。これらのピークはBiagioni et al. (2019)による砒メダ石およびLafuente et al. (2015)によるメダ石のラマンスペクトルの結果と調和的である。
なお、砒メダ石は現時点では産出が極めてまれであることに加えて、その結晶内に微細なばら輝石を包有しており、精密な結晶構造解析を行うに至っていないことは今後の課題である。
砒メダ石はメダ石(medaite)のV5+をAs5+で置換した鉱物で、イタリア北部アペニン帯の変成チャートに胚胎されるマンガン鉱床から報告された(Biagioni et al., 2019)。模式地ではブラウン鉱を切る石英脈中に最大200 μmの赤橙色の柱状結晶として産し、方解石、Asに富むメダ石、菱マンガン鉱、滑石、ガノフィル石と共生する。
砒メダ石を見出した大和鉱山の珪質マンガン鉱は主に緻密なハウスマン鉱、菱マンガン鉱、粗粒のばら輝石から構成される。砒メダ石は菱マンガン鉱やばら輝石中に最大径1 mm以下の黄色~赤橙色粒状結晶として産出しガラス光沢を呈する。大和鉱山産砒メダ石はばら輝石と密接に共生してメダ石を伴わない点で、模式地のものと産状が異なる。
SEM-EDSによる質量分析の結果はSiO2 30.12, CaO 0.99, V2O5 3.25, MnO 48.03, As2O5 13.26, H2Ocalc. 1.01, 合計96.65 wt%を得た。MnをすべてMn2+と仮定してO = 18で規格化した場合の実験式は、(Mn2+6.04Ca0.16)Σ6.20 [(As1.03V0.32)Σ1.35Si4.47]5.82O18(OH)である。砒メダ石の理想組成式Mn2+6 As5+Si5O18(OH)と比較するとAs-Vがやや過剰でSiが少ないことから、Si四面体骨格の一部をAs-Vが置換しているものと推測される。
ラマン分光分析の結果、340–360, 994 cm-1に弱いピーク、644, 658 cm-1に中程度のピーク、859, 879, 894 cm-1に強いピークが検出された。これらのピークはBiagioni et al. (2019)による砒メダ石およびLafuente et al. (2015)によるメダ石のラマンスペクトルの結果と調和的である。
なお、砒メダ石は現時点では産出が極めてまれであることに加えて、その結晶内に微細なばら輝石を包有しており、精密な結晶構造解析を行うに至っていないことは今後の課題である。