2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

R2: Crystal structure, crystal chemistry, physical properties of minerals, crystal growth and applied mineralogy

Sat. Sep 14, 2024 9:00 AM - 12:00 PM ES024 (Higashiyama Campus)

Chairperson:Fumiya Noritake, Mariko Nagashima, Makoto Tokuda

9:20 AM - 9:35 AM

[R2-02] Phase change of priceite Ca2B5O7(OH)5·H2O during thermal decomposition

*Atsushi KYONO1, Kosuke Yamaguchi1, Satoru Okada1, Hiroki Hasegawa1 (1. Life & Environmental Sciences, University of Tsukuba)

Keywords:Priceite, Borate mineral, Thermal decomposition, Synchrotron X-ray Diffraction

【はじめに】CI炭素質コンドライトのホウ素濃度は0.78 ppmと僅かであり(Shearer & Simon, 2017),地球のMORBのホウ素濃度も1 ppm以下と非常に少ない(Wunder et al., 2005).しかし,ホウ素は水に可溶であるため,MORBから海洋に到達すると徐々に海水に溶出し,海水のホウ素濃度は4.5 ppmまで上昇する(Wunder et al., 2005).その後,海洋堆積物や含水鉱物に取り込まれ大陸地殻まで運ばれると,大陸地殻のホウ素濃度はさらに17 ppmに達する(Rudnick & Gao, 2014).インコンパティブル元素であるホウ素は,マグマ中ではメルトに濃集するため,花崗岩質ペグマタイト中でのホウ素濃度は200 ppm以上に上昇する(Stiling et al., 2006; Simmons et al., 2016).その後,花崗岩質ペグマタイトが地表で風化すると地表水に溶け出し,最終的に盆地に濃集し,大規模な非海洋性蒸発岩ホウ素鉱床を形成している(Helvaci & Palmer, 2017).ホウ酸塩鉱物は,これまでに299種類が報告されている(IMA Database).近年,ホウ素鉱物の多様性は地質学的な時間と共に増加し,高温変成作用を伴う超大陸の衝突時に加速することが提唱され (Grew et al., 2017),ホウ素鉱物の多様性メカニズムが注目されている(Kyono & Yamaguchi, 2024, AM in press).Priceite Ca2B5O7(OH)5·H2Oは,蒸発岩鉱床(Helvaci & Alonso, 2000)や熱水鉱床(Palache et al., 1951)など様々な地域から産出し,日本からも岡山県布賀鉱山から報告されている(Kobayashi et al., 2017, JMPS).Priceiteは合成も容易である(Sun et al., 2011).しかしながら,priceiteの熱分解に伴う相変化は明らかになっていない.そこで,本研究では,priceiteの熱分解に伴う相変化を,熱分析,X線回折実験によって明らかにした.
【実験方法】カルフォルニア州Death Valley産のpriceiteと合成priceiteを実験に用いた.合成priceiteは,塩化カルシウム,ホウ酸,水酸化ナトリウムをMilli-Q水に加え攪拌し,150℃で6時間加熱して合成した.熱重量-示差熱分析(TG-DTA)は,50℃から1000℃までを昇温速度10℃/minで測定した.高温ex-situ 放射光X線回折実験の試料は,粉末にしたpriceiteを白金るつぼに入れ50℃から1000℃の温度範囲をそれぞれ1時間大気下で加熱し作成した.放射光粉末XRD測定は,KEK-PF BL8Bで行った.
【結果と考察】TG-DTAの結果,priceiteは120℃から重量減少を開始し,360℃付近までに1.0 H2O分の脱水が起きた[Ca2B5O7(OH)5].その後,連続的に重量が減少し,430℃から580℃の間にすべての脱水酸基した[Ca2B5O9.5].高温ex-situ X線回折の結果,priceiteは200℃までpriceiteの回折パターンを維持し,250℃から結晶相Xに変化した.その後,400℃までは結晶相Xを示し,450℃で完全に非晶質化した.その後,700℃からCaB2O4の回折パターンが出現し1000℃まで継続した.Priceiteのホウ酸塩の基本構造単位(Fundamental building blocks; FBBs)は,Burns et al. (1995)の表記法に従うと<3□>-<△2□>と表記される.これは3つの4配位のホウ酸(□)の環状構造(<3□>)と,一つの3配位のホウ酸(△)と二つの4配位のホウ酸(2□)の環状構造(<△2□>)が,一つのホウ酸を共有し二量体(<3□>-<△2□>)を構成している.このpriceiteが120℃から脱水を開始し,250℃まではpriceite の構造を維持するが,その後,1.0 H2O分の脱水が起こり,結晶相Xに変化している.続いて,結晶相Xの1.0 OH基分の脱水酸基が起こると非晶質相に変化している.そして,580℃では無水の非晶質相(Ca2B5O9.5)になるが,700℃でCaB2O4 + 1/2B2O3 に分解してCaB2O4が結晶化している.CaB2O4のホウ酸塩のFBBは,△-△-△と表記され,これは3配位のホウ酸(△)の鎖状構造である.PriceiteとCaB2O4のFBBを比べると共通する構造単位はない.したがって,結晶相X,非晶質相を経てCaB2O4になるまでに,priceiteの<3□>-<△2□>のFBBは完全に再構成されると考えられる.
R2-02