一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

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R4:地球表層・環境・生命

2024年9月13日(金) 12:30 〜 14:00 エントランスホール (東山キャンパス)

12:30 〜 14:00

[R4-P-01] プラスチック等の強化材に向けたアラゴナイトの設計と合成

*佐久間 博1、末原 茂1、加門 真純1、田村 堅志1 (1. NIMS)

キーワード:炭酸塩、弾性率、アスペクト比、炭酸ガス

近年環境問題への対応からカーボンニュートラルや資源循環の研究が必要とされている。プラスチックは採掘時に二酸化炭素を多く排出する石油由来ではなく、バイオ由来のプラスチックへの転換が求められている。バイオ由来プラスチックの一つの欠点は強度が弱いことである。そこで本研究では、大気中の二酸化炭素を活用したバイオ由来プラスチックの強化材の開発を目指し、アラゴナイトに着目する。
アラゴナイトは炭酸カルシウムの高圧相として知られているが、表層環境において多く産出し、高圧でなくても条件によって合成することができる。アラゴナイトの特徴としては、カルサイトよりも密度が高く、比較的アスペクト比の高い針状の外形を示すことが多い。複合材料の引張強度や曲げ強度は、強化材の弾性率とアスペクト比に依存することがHalpin-Tsaiモデルを通して理論的に知られており、アラゴナイトはこのような材料物性の強化に有用である。本研究では、強化材として活用するアラゴナイトの理想的な結晶成長方向を検討するとともに、合成条件の探索を行う。
アラゴナイトの合成は炭酸ガス化合法を用いた。Ca源としては石灰岩の利用を想定し消石灰(Ca(OH)2)を用いた。炭酸ガスは空気との混合ガスを用いた。温度・添加物(Mg塩)・pH・ガス流量を制御・計測し、生成されたアラゴナイトは顕微鏡、XRD等で分析した。アラゴナイトの理想的な結晶成長方向を検討するため、弾性率の結晶方位依存性を理論的に導出した。
発表では、まず炭酸ガス化合法によるアラゴナイト合成の先行研究について紹介する。次に本研究の合成実験の結果を報告する。合成開始から2時間後の試料のXRDから、アラゴナイト・ブルーサイトの生成が観察された。その後時間の経過とともにブルーサイトのピークは減少し、アラゴナイトのピーク強度が増加したことから、アラゴナイトを主成分とする炭酸塩結晶の合成に成功したことを確認した。結晶の外形は針状であり、合成時間に依存して長軸が伸びた。アラゴナイトの弾性率に関しての理論計算から、弾性率は結晶軸の方向に依存して変化し、成長方向を制御できれば従来のアラゴナイトよりも有用なプラスチック強化材となることがわかり、今後の研究課題となることがわかった。