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[R7-02] LA-ICP-MS分析に基づく日本国内の熱水性鉱床中に含まれるReの分布領域
「発表賞エントリー」
キーワード:熱水性鉱床、LA-ICP-MS、Re局所分析、Re-Os放射年代法
熱水性鉱床は日本各地に普遍的に分布し,かつての日本の金属生産を支えてきた鉱床である.こうした金属鉱床の形成プロセスを理解するうえで,鉱床の形成年代は非常に重要な制約条件となる.そのため,鉱化年代の決定は火成活動をはじめとした鉱床形成時における地質セッティングの理解に貢献してきた.熱水性鉱床の形成年代は従来,脈石鉱物として含まれている氷長石などに対してK-Ar放射年代法を用いることで決定されてきた.近年,新たに金属鉱床の形成年代を決定する手法としてRe-Os放射年代法が注目されている.Reは鉱石鉱物に含まれる有用金属と似た挙動をとるため,鉱床中の有用金属が析出した年代を測定できる手法とされている(Selby et al., 2009).一方で,ReおよびOsは地球表層において極めて稀な元素であるため,よく知られた濃集相である輝水鉛鉱を除いて,熱水性鉱床中のどの部分にそれらが濃集しているのかは十分に理解されていない.そのため,輝水鉛鉱を産出しない熱水性鉱床に対するRe-Os放射年代法による年代決定が困難であるという問題がある.そこで本研究では,Reの濃集相を把握することを目的として,日本国内の様々な熱水性鉱床の鉱石に対してレーザーアブレーション (LA)-ICP-MSを用いて局所微量元素組成分析を実施した.LA-ICP-MSによる局所微量元素組成分析の結果,例えば兵庫県明延鉱床の鉱石においては,黄銅鉱や閃亜鉛鉱などの硫化鉱物と脈石鉱物の石英との境界部分にReが濃集していることが示された.Reを検出した部分を偏光顕微鏡,実体顕微鏡,SEM-EDSを用いて観察したところ,粒径30~40 µm程度の細粒な輝水鉛鉱を確認した.Reは輝水鉛鉱中のMoを置換する形で結晶中に濃集することが知られているため(Takahashi et al., 2007),検出された強いReシグナルはおそらく細粒な輝水鉛鉱に起因するものと考えられる.これらの輝水鉛鉱は微小であるが,Re-Os年代測定法による鉱床の形成年代を決定には十分な量のReを濃集している可能性が高い.このような細粒な輝水鉛鉱の存在がその他の熱水性鉱床において観察されれば,様々な熱水性鉱床の形成年代を直接的に決定できる可能性がある.
Selby, D., Kelley, K.D., Hitzman, M.W., and Zieg, J., 2009, Re-Os sulfide (bornite, chalcopyrite, and pyrite) systematics of the carbonate-hosted copper deposits at Ruby Creek, southern Brooks Range, Alaska: Economic Geology, v. 104, no. 3, p. 437–444.
Takahashi, Y., Uruga, T., Suzuki, K., Tanida, H., Terada, Y., and Hattori, K.H., 2007, An atomic level study of rhenium and radiogenic osmium in molybdenite: Geochimica et Cosmochimica Acta, v. 71, no. 21, p. 5180–5190.
Selby, D., Kelley, K.D., Hitzman, M.W., and Zieg, J., 2009, Re-Os sulfide (bornite, chalcopyrite, and pyrite) systematics of the carbonate-hosted copper deposits at Ruby Creek, southern Brooks Range, Alaska: Economic Geology, v. 104, no. 3, p. 437–444.
Takahashi, Y., Uruga, T., Suzuki, K., Tanida, H., Terada, Y., and Hattori, K.H., 2007, An atomic level study of rhenium and radiogenic osmium in molybdenite: Geochimica et Cosmochimica Acta, v. 71, no. 21, p. 5180–5190.