一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

講演情報

口頭講演

R7:岩石・鉱物・鉱床 (資源地質学会 との共催 セッション)

2024年9月12日(木) 14:00 〜 17:30 ESホール (東山キャンパス)

座長:秋澤 紀克(東京大学大気海洋研究所)、越後 拓也(秋田大学)

岩石学,鉱物学,鉱床学,地球化学などの分野をはじめとして,地球・惑星物質科学全般にわたる岩石及び鉱物に関する研究発表を広く募集する。地球構成物質についての多様な研究成果の発表の場となることを期待する。

17:15 〜 17:30

[R7-12] 地質試料を用いた暗黒物質探索の試みについて

*阿部 なつ江1,2、廣瀬 重信1、常 青1、羽生 毅1、長谷部 徳子2、星野 靖3、加美山 隆4、川村 洋史1、村瀬 孔大5、中 竜大6、小國 健二1、鈴木 勝彦1、山崎 誠子7 (1. 国立研究開発法人海洋研究開発機構、2. 金沢大学、3. 神奈川大学、4. 北海道大学、5. ペンシルベニア州立大学、6. 東邦大学、7. 国立研究開発法人産業技術総合研究所)

キーワード:パレオ・ディテクター、暗黒物質、地球ニュートリノ、宇宙線

地質試料に記録された宇宙線や地球内外の物質の痕跡は、地質学や天体物理学の研究に有効に利用できる。例えば、南極の氷床コアを用いた研究では、地球外部から到達するニュートリノなどの宇宙線の痕跡を観察して超新星爆発の回数や年代を推定したり、地球内部から放出されるジオニュートリノを観測する試みがある。また、海底のサンプルを使って宇宙線の強度を測定する研究は、長い地質学的期間にわたるさまざまな出来事についての洞察をもたらすと期待されている。一方で、宇宙に存在する物質のうち、このような宇宙線を含む直接観測できる物質は約5%に過ぎない。一方、約70%弱はダークエネルギーであり、残りの25%強はダークマター(暗黒物質)である。このような未知の物質やエネルギーを探索するため、暗黒物質の検出にはキセノンを用いた大型検出器が一般的である。しかし、検出器の拡張性には限界があり、検出限界の向上は困難である。この状況を鑑み、大型検出器以外の手法を検討している。例えば、雲母のような天然鉱物は、地質学的な時間スケールで存在しており、小さなサンプルでも十分な被ばく量がある。これらの鉱物は、暗黒物質の相互作用の証拠である核反跳の痕跡を、地球の年齢よりも長い期間保持することができる。これらの痕跡は、エッチングされると観察可能なピットとして現れる。1995年、スノーデン-イフトたちは、5億年前の天然白雲母をわずか0.08平方ミリメートルの面積で研究した。我々は、形成期間が長く、海底や大陸の深部から採取され、周囲の放射性物質が少ない天然の鉱物(カンラン石や雲母など)を利用することを提案している。我々は、これらの試料から「古物質検出器」として暗黒物質の痕跡を同定するために必要な観測技術を開発中である。未だ実観測までは遠い道のりではあるが、本発表では、我々の現在の取り組みを紹介し、より効率的な観測方法について議論したい。