第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:口演発表

一般口演 神経1

2023年9月17日(日) 16:00 〜 16:40 D会場 (431講義室(4号館3F))

座長:岡本 圭一郎(新潟大 院医歯学 口腔生理)

16:30 〜 16:40

[O2-D-PM2-04] 社会的敗北ストレス経験による中脳水道周囲灰白質および三叉神経脊髄路核尾側亜核の神経活動変化

〇川﨑 詩織1、小林 真之1 (1. 日大 歯 薬理)

キーワード:心理社会的ストレス、中脳水道周囲灰白質、三叉神経脊髄路核尾側亜核

本研究は、下行疼痛抑制経路の起始点である中脳水道周囲灰白質(PAG)および口腔顔面領域の侵害情報が入力する三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)に着目して、心理社会的ストレスによる神経活動の変化と行動変容について検討した。動物には、14日間、若週齢のVGAT-Venusラットと、雄性Long-Evans (LE)ラットを一日一回10分対峙させて作製するSocial defeat stress(SDS)モデルを使用した。抑うつ症状の評価と顔面領域の疼痛逃避閾値の変化は、血清コルチコステロン量、強制水泳試験及び社会的回避性試験、口ひげ部へのVon Frey試験によって評価した。さらにSDS負荷14日後、VcとPAGの神経細胞およびグリア細胞の興奮性の評価として、c-Fosとglial fibrillary acidic protein (GFAP)の蛍光免疫染色を行った。電気生理学的アプローチとして、PAGの興奮性入力の変化を検索するために、ホールセル・パッチクランプ法を用いてminiature EPSC (mEPSC)とspontaneous EPSC (sEPSC)を記録した。SDS負荷群では、血清コルチコステロンの上昇、不動時間の延長、LEラットに対する回避行動が認められたことから、うつ症状を呈していると考えられた。口ひげ部の疼痛逃避閾値は、処置7~14日で低下しており、VcにおけるGFAP陽性細胞発現が亢進している一方で、PAGでは発現が低下していた。しかし、c-Fos陽性細胞発現には差が認められなかった。PAG内の興奮性細胞におけるsEPSCとmEPSCは、未処置群と比較して頻度および振幅が減少していた。以上の結果より、心理社会的ストレスはうつ状態と口腔顔面領域における痛覚過敏を惹起し、その背景にはVcおよびPAGのグリアの活性状態とPAGにおける興奮性応答の変調の関与が示唆された。