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[O2-E-AM1-05] Streptococcus mutansロイテリサイクリン産生機構の解析
キーワード:Streptococcus mutans、ロイテリサイクリン、tetR様regulator
Streptococcus mutansは種々のバクテリオシンを産生する。その1種であるロイテリサイクリンは、9つのORFからなる遺伝子クラスター産物である。そのクラスター内にはプロモーター結合型転写制御機構であるTetR様Regulatorが2つ (MucGおよびMucH)存在している。これまでmucH欠損株は抗菌活性の消失が、mucG欠損株は抗菌活性の増加が確認されている。しかしながらこれらTetR様regulatorのロイテリサイクリン遺伝子発現メカニズムの詳細は明らかとされていない。今回われわれはMucGおよびMucHのロイテリサイクリン遺伝子発現メカニズムに関する検討を行った。S. mutansロイテリサイクリン産生株であるKYTMD69株のmucGおよびmucH欠損株は、既存の報告同様の抗菌活性の増加・減少が認められた。そこでこれら欠損株の遺伝子発現を確認したところ、mucH欠損株ではクラスター内遺伝子のすべての発現が減少しているのに対して、mucG欠損株ではクラスター内遺伝子の発現は上昇していた。本結果よりロイテリサイクリン産生は、mucHがpositive regulator、mucGはnegative regulatorとして働き、相互に関与しながらその産生をコントロールしていることが明らかとなった。さらにクラスター内遺伝子産物がmucG、mucHのligandとして作用し、TetRのプロモーター領域への結合と遊離を調整していることが示唆された。ロイテリサイクリン産生は、競合する他細菌を抑制することで自身の増殖を有利にすることができる一方で、その産生は自身に負担となる。遺伝子クラスター内のMucGおよびMucHにより、ロイテリサイクリン産生が独自に制御されていることが明らかとなった。