第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P1-3-04] 温度依存性器官培養法を用いた組織長期保存スクリーニングモデルの検討

〇湯田 智美1、吉崎 恵悟1、田 甜2、宮崎 佳奈子1、鮒田 啓太1、水田 敢士1、傅 堯1、川原 純平1、張 玲1、高橋 一郎1 (1. 九大 院歯 矯正、2. 九大 院歯 小児口腔)

キーワード:低温培養、歯胚発生、組織保存

近年の再生技術の進歩は著しく、iPS細胞や組織工学技術を用いた肝臓や心臓など様々な器官再生が現実のものとなりつつある。しかしながら、再生臓器が移植に適した大きさおよび発生段階に達するまでには長い時間を要する上、再生臓器を移植するまでの間、長期に保存する方法は未だ確立されておらず、患者に安定的に再生臓器を供給するためには、再生臓器を移植に適した状態で長期保存する技術開発が必要である。本研究では、組織長期保存に必要な条件を検討するスクリーニングモデルとして、マウス歯胚器官培養法を用いて研究を行った。胎生14日齢 (E14)マウス歯胚を摘出し、器官培養法を用いて4℃および25℃の低温条件で7日間保存したところ、歯胚発生の停止および遅延がみられた。その後、従来の培養温度である37℃に変更し、器官培養を行ったところ、歯胚の発生が再開し、正常な形態形成が認められた。この現象は歯胚のみならずE13マウス顎下腺でも確認された。さらに、保存期間を28日間に延長したところ、4℃保存群は歯胚の再発生が認められなかったのに対し、25℃保存群ではその後の37℃における歯胚発生が観察されたことから、歯胚長期低温保存には25℃の方が有利である可能性が示唆された。さらに、低温保存した歯胚を用いて遺伝子発現を確認したところ、4℃保存群と比較して25℃保存群では歯の幹細胞マーカー発現が維持されていた。また、25℃の低温保存では低温ショックプロテイン (CSP) の発現が誘導され、幹細胞性の維持とCSPの発現が長期保存に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。以上の結果より、培養温度を適切に管理することで組織発生段階を制御し、組織長期保存を可能とする可能性が示唆された。