第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P1-3-08] イモリ下顎組織の再生過程の観察

〇坪崎 健斗1、田谷 雄二1,2、埴 太宥1、工藤 朝雄1、佐藤 かおり1、添野 雄一1 (1. 日歯大 生命歯 病理 、2. 日歯大 生命歯 初年次教育担当)

キーワード:再生、下顎骨・メッケル軟骨、歯

【目的】両生類イモリは発生・再生分野で研究対象とされてきたが、イモリ顎組織の再生過程の動態については不明な点が多い。本研究では、成体イモリの下顎切除後の再生過程について3次元的に解析した。【材料と方法】在来種の成体アカハライモリ(Cynops Pyrrhogaster)の雄を実験に用い、全身麻酔下で下顎前方より1/2を切除した。切除から0~60週間にわたって、X線マイクロトモグラフィー(以下、マイクロCT)、ならびに組織学的な手法により下顎組織の再生過程について解析した。【結果】下顎切除後、1週間で切断面が傷上皮により塞がった。切除後3週前後で創傷がほとんど治癒するとともに、下顎切断部に再生芽を形成し、この再生芽の種々の細胞分化により諸組織・器官の再生が開始された。下顎はオトガイ方向に向けて伸長しはじめたが、まず、血管新生が起こり、少し遅れてリンパ管や神経軸索、骨格筋、舌、唾液腺などが再生しはじめた。骨格系では、切除後8週前後からメッケル軟骨の伸長とともに歯骨の再生が開始され、切除後16週頃には正中近傍まで再生が進んだ。歯の再生は新たな歯骨の形成に追随しておこり、既存の歯列から連なるように円錐状の再生歯が歯骨上に数多く配列しているのが観察された。歯の再生では、再生した上皮から伸びた歯堤と歯胚のほか、エナメル質や象牙質に相当する歯質や歯髄の形成も認められた。切除後32週前後で歯骨の舌側での骨添加によって下顎骨の形成が進行し、切除後60週頃には下顎骨は切除前の厚みにまでほぼ回復した。【結論】以上のことから、成体アカハライモリは旺盛な再生能を有し、切除された下顎組織は元の組織構造にまで復元することが確かめられた。本研究はJSPS科研費#18H04061の助成を受けた。【会員外共同研究者】日本歯科大学附属病院 川本沙也華、慶応義塾大学 貴志和生・石井龍之、筑波大学 千葉親文。