第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P1-3-13] 口腔上皮におけるTRPV4を介した細胞内アクチン動態調節と創傷治癒の関連

〇吉本 怜子1、大崎 康吉1、澤田 孟志1、高 瑋琦1、曹 愛琳1、城戸 瑞穂1 (1. 佐賀大 医 組織神経解剖)

キーワード:口腔粘膜、細胞移動、アクチン

上皮は多様な刺激にさらされながら、内部組織を保護している。口腔粘膜の上皮は傷を受けやすい一方で皮膚よりも速やかに治癒することから、その機構解明はよりよい創傷治療に繋がると考えられる。Transient receptor potential vanilloid 4 (TRPV4) は温かい温度や機械的刺激、酸、低浸透圧などによって活性化されるカルシウム透過性陽イオンチャネルである。私たちはTRPV4が口腔粘膜上皮に皮膚よりも高く発現することから、その創傷治癒における役割を明らかにするために研究を行った。TRPV4遺伝子欠失マウス (TRPV4KO) では野生型マウス (WT) に比べて口蓋に形成した直径1.5mmの創がより速く閉鎖することがわかった。また、TRPV4KO由来の口腔上皮培養細胞は、WTに比べて細胞移動が促進され、細胞間接着が不整であった。マウス不死化歯肉上皮細胞株GE1細胞にて、TRPV4の細胞内局在を超解像レベルで観察すると、細胞間接着や移動に重要なアクチン線維との共局在を呈した。細胞内ではactin flowと呼ばれるアクチン線維の流れが観察され、細胞移動や細胞間接着に重要な役割を果たすことが近年明らかとなっている。そこで、細胞内アクチン動態をライブイメージングにて観察したところ、TRPV4アゴニストによりアクチンの束形成および流れに変化を認めた。以上より、TRPV4が細胞内アクチン動態を調節することで、上皮細胞間接着や移動、ひいては創傷治癒を調節している可能性が示唆された。