第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P1-3-45] 転写因子NF-κB p65サブユニットによる上皮細胞分化と発毛制御

〇高 田1、川端 由子2、清島 保3、自見 英治郎1,4 (1. 九大 院歯 口腔細胞工学、2. 九大 院歯 口腔機能解析、3. 九大 院歯 口腔病理、4. 九大 院歯 OBT研究センター)

キーワード:NF-κB、p65、上皮細胞

転写因子NF-κBは、免疫応答や炎症反応に関わる様々な遺伝子の発現を調節するだけでなく、歯のエナメル質形成、臼歯の咬頭形態や数の制御にも関与する。本研究ではNF-κBの主なサブユニットであるp65を上皮特異的に欠損させたマウス (p65cKO)の作製・解析を行い、エナメル質形成過程におけるp65の役割を解明することを目的とした。p65flox/floxマウスとKeratin (KRT)14-Creマウスを交配しp65cKOマウスを作製した。p65cKOマウスはp65flox/floxマウスと比較して、成長過程に大きな変化はなく、外見上も差がなかった。2、4、8週齢のp65cKOマウス切歯は、p65flox/floxマウスと比較して形態および色調に違いはなかった。24週齢では角膜中央部で過剰増殖による角膜細胞化成が見られ、上下顎切歯に黒色の毛が認められた。一方、24、36および42週齢のp65cKOおよびp65flox/floxマウス頭部のμCTを撮影したところ、切歯および臼歯の形態異常はなく、エナメル密度も有意な差はなかったが、p65cKOマウスの下顎歯槽骨の一部に空洞が認められた。組織学的解析を行ったところ、空洞部分は、多数の毛様構造物を含む結合組織で占められていた。毛様構造物には節状の小室を認め、多くの黒褐色の顆粒を認めた。これらの黒褐色の顆粒はメラニン漂白法にて消失し、メラニン色素を含み、HE染色像から毛であることが確認された。またp65cKOマウス切歯の萌出部位近くでは炎症性細胞が確認されたが、エナメル上皮細胞の配列の乱れは観察されなかった。以上の結果より、p65が切歯歯周組織における異所性の発毛制御に関与していることが示唆された。
【利益相反】利益相反状態にはありません。