第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P2-2-28] 細菌シングルセルゲノム解析による唾液細菌叢の解析

〇山口 雅也1,2、川端 重忠2,3 (1. 阪大 院歯 バイオインフォ、2. 阪大 CiDER、3. 阪大 院歯 口腔細菌)

キーワード:微生物叢、細菌シングルセルゲノム解析、遺伝子解析

口腔微生物叢には数百種の細菌が存在するが、培養手法が確立されていない種が多く存在する。本研究では、細菌シングルセルゲノム解析技術を用いて、唾液中の細菌種の同定と遺伝子の分布について、培養を介さない解析を試みた。
 健常人1名より唾液を採取し、約1 mLを採取キットOMNIgene Oralにて、約3 mLをRPMI1640-グリセロール培地にて保存した。それぞれの検体について、16S rRNA解析によって細菌叢構造の解析を行った。さらに、メタゲノムショットガン解析、ならびに細菌シングルセルゲノム解読を行い、耐性遺伝子と病原性遺伝子の分布を検索した。
 16S rRNAによる細菌叢構造解析の結果、両検体は類似した構造を示し、レンサ球菌属がもっとも多い割合で認められた。メタゲノムショットガン解析では80%が細菌以外のDNAであった一方で、シングルセル解析で細菌以外のDNAの割合は大幅に低かった。シングルセル解析にて、採取キット保存検体は48 well中43 wellで、グリセロールストック検体では48 well中45 wellでゲノム配列が得られた。耐性遺伝子に関して、88菌体のうち、4菌体がβラクタマーゼをコードするcfxAを、4菌体がエリスロマイシン耐性遺伝子ermFを保有していた。テトラサイクリン耐性に関して、9菌体がtet32tetMtetOtetQいずれかを保有していた。メタゲノムショットガン解析ではcfxA, ermF, ermXが完全な配列で、tetQtetMなど他の耐性遺伝子は断片的に検出された。また、病原因子に関して、レンサ球菌属の10菌体は、肺炎球菌由来の病原因子を1~4種類保有していた。
 本研究の結果から、シングルセル解析を用いて口腔細菌叢の個々の細菌における耐性遺伝子と病原因子の分布を同定できることが示唆された。