第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P2-3-01] TGF-βアイソフォームがエナメル上皮細胞の上皮間葉転換に及ぼす反応性について

〇宮川 友里1、唐木田 丈夫2、大熊 理紗子2、山本 竜司2、小林 冴子1、朝田 芳信1、山越 康雄2 (1. 鶴大 歯 小児歯、2. 鶴大 歯 生化学)

キーワード:エナメル上皮細胞、TGF-β、上皮間葉転換

トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)は、体内の様々な細胞によって産生される生理活性物質の1つであり、哺乳類では3種類のアイソフォーム(TGF-β1、β2、β3)が知られている。【目的】TGF-βアイソフォームがマウスエナメル上皮細胞(mHAT9d)に及ぼす反応性の相違を調べることを目的とした。【材料および方法】mHAT9dにTGF-β1、β2、またはβ3を添加し、以下の実験を行った。1)細胞形態変化の観察、2)次世代シーケンシング(NGS)による遺伝子の網羅的解析、3)TGF-βシグナル経路の阻害実験、4)レポーター遺伝子を用いたTGF-βアイソフォームの転写量の測定、5)TGF-β受容体に対するTGF-βアイソフォームの結合親和性の観察【結果】TGF-β1、β3添加群に細胞形態の変化と細胞遊走能が認められた。遺伝子発現解析よりTGF-β1、β3添加群は間葉系マーカー遺伝子発現の上昇が認められたが、TGF-β2添加群では認められなかった。NGS解析および阻害実験より、TGF-β添加群に生じた上皮間葉転換(EMT)は主にRhoシグナル経路を介して生じることがわかった。また、ルシフェラーゼアッセイにおいて、各TGF-βアイソフォームの反応性の相違が同様に認められ、更にTGF-β受容体の補助受容体に対する遺伝子発現解析において、ベータグリカンは各TGF-βアイソフォーム添加群で低下したが、エンドグリンはTGF-β1、β3添加群で上昇し、β2では変化がなかった。加えて、抗エンドグリン抗体を用いた免疫蛍光染色においてもTGF-β1、β3添加群で染色強度が強かった。【考察】TGF-β添加群のmHAT9dのEMTは主に Rhoシグナル経路を介して行われ、各TGF-βアイソフォームの反応性の相違は、エンドグリンを介したTGF-β受容体に対する結合親和性に起因する事が示唆された。