第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P2-3-20] 効率的な歯髄幹細胞のインスリン産出細胞分化誘導法の開発

〇下浦 優希1、安藤 百花1、田中 とも子2、荒木 萌花2、那須 優則1、堀江 哲郎1,2 (1. 日歯大 生命歯 共同研、2. 日歯大 生命歯 衛生)

キーワード:歯髄幹細胞、インスリン、再生医療

歯髄幹細胞(Dental pulp stem cells、以下DPSCs)は、人工多能性幹細胞や胚性幹細胞のように、遺伝子導入の必要や、倫理的な問題がないことから、安全で法的障壁が低く、実用的な再生医療の細胞源として期待されている。我々は、DPSCsのインスリン産出細胞(Insulin-producing cell、以下IPC)への分化誘導法の確立に取り組んできた。今までに、DPSCsをIPCへと分化誘導させるために、DPSCsから分離したCD117陽性細胞を細胞源として、生理活性濃度の硫化水素と超低接着表面シャーレを用いた3次元培養を組み合わせた新規の培養系を確立した。また、このIPCを糖尿病モデルラットの腎皮膜下に移植したところ、高血糖などの病態を改善することがわかった。
一般的にIPCへの分化は、幹細胞から胚体内胚葉細胞、膵前駆細胞、膵内分泌前駆細胞を経由してIPCへと至るとされている。しかし分化途上の細胞の一部はIPC以外の細胞へと分化し、再生医療の障害となる。今回、DPSCsを効率よくIPCに分化させるために、培養条件の最適化を試みた。継代回数の制約や個体差のある通常のDPSCsではなく、株化されたDPSCsを実験に用いることで、試行回数や条件を増やし、より最適な培養条件を決定することを目的とした。分子マーカーの発現量を定量的にモニターし、各分化段階で正しく分化誘導されているか逐次確認しながら、培養条件の調整を行った。その結果、膵臓形成に必要な遺伝子Pdx1の発現量を飛躍的に上昇させるが、目的外の細胞の分化マーカーの発現を低く抑えた分化細胞を取得することに成功した。現在、新しくできたIPCのインスリン分泌能やグルコース濃度応答性などの生理的機能について調べている。