第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P2-3-29] 転写因子SOX4は上皮ケラチノサイトの上皮間葉転換を可逆的に制御する

〇長岡 良礼1、武石 幸容1、武田 佳奈1,2、岡村 和彦3、八田 光世1 (1. 福歯大 歯 分子機能、2. 福歯大 歯 矯正 、3. 福歯大 歯 病態構造)

キーワード:上皮組織、エピジェネティクス、上皮間葉転換

SOX4 はSOX(Sry-related high-mobility group box)ファミリーに属する転写因子で、上皮細胞の癌化および、浸潤・転移の促進への関与が知られている。我々はこれまでにヒト不死化ケラチノサイト細胞株(HaCaT)において、TGF-β1誘導性上皮間葉転換(EMT)の際にSOX4発現の増加を見出しているが、その機能的な役割は不明である。本研究では、HaCaTのフェノタイプ変化における、SOX4の関与を検討するため、Doxycycline(DOX)誘導性にSOX4を発現するHaCaT細胞(SOX4-HaCaT)を作製した。SOX4-HaCaTを48時間DOX処理したところ、敷石状から紡錘状への形態変化が確認された。さらに上皮細胞のフェノタイプに関与する因子群の発現を解析したところ、SOX4発現により上皮系マーカー(KRT13、KRT15、CLDN1)の発現減少、間葉系マーカー(FN1)の発現増加がみられた。これらより遺伝子発現プロファイルが大きく変化している可能性が考えられ、RNAシーケンスによる網羅的解析を行った。発現変動遺伝子群について、遺伝子クラスタリング解析、Gene Ontology解析を行ったところ、解剖学的形態形成や細胞分化に関する遺伝子発現の増加が見られ、上皮形成やケラチン化に関する遺伝子発現の減少がみられた。また、SOX4-HaCaTをDOXで48時間処置した後、除去した状態で培養しフェノタイプ変化の可逆性について調べた。DOX処置により紡錘状に変化していた形態はDOXを除くことで敷石状への回復がみられた。さらにSOX4発現で変化したタンパク質や、発現変動遺伝子においても回復することが分かった。以上の結果より、SOX4がケラチノサイトのEMT様のフェノタイプ変化を誘導し、さらにその変化は可逆的であることが示唆された。