[P3-3-18] マウス切歯歯胚におけるYAP・TAZの免疫組織化学的検索
キーワード:歯の発生、免疫組織化学的染色、Hippoシグナル
YAP・TAZはHippo系シグナルの転写共役因子であり細胞の増殖,分化や細胞死など様々な細胞応答を誘導すると共に,発生過程における器官サイズの制御に関与する。歯の発生は口腔上皮の肥厚と嵌入から始まり,歯堤の先端に歯胚が形成される。歯胚は上皮と神経堤由来である間葉との相互作用により蕾状期,帽状期,鐘状期へと段階的に成長する。歯胚におけるHippoシグナルの発現に関してはいくつかの報告が散見され,歯胚の各ステージで発現し歯冠の形態形成や歯根の形成などに関与することが示唆されているもののその詳細が不明である。そこで本研究は,マウスの切歯歯胚におけるYAP・TAZの発現を免疫組織化学的に検索し,これら蛋白の歯の発生への関与について検討した。ICR系妊娠マウスから胎生14日(E14)および18日(E18)の胎仔の頭部を摘出し,4%パラホルムアルデヒドによる固定,10 % EDTAにて脱灰後,パラフィン包埋し4 μmの薄切切片を作製した。YAP・TAZに対する抗体を用い免疫組織化学的染色を行った。YAP蛋白はE14とE18の歯胚に局在がみられ,特にエナメル芽細胞や象牙芽細胞において強い染色性を示した。TAZ蛋白はE14の歯胚では一部を除いて発現がみられず,E18の歯胚において局在を認めた。E18の歯胚におけるTAZ蛋白の発現はエナメル芽細胞を含む上皮および象牙芽細胞を含む間葉ともに観察された。YAP蛋白はマウス切歯歯胚において細胞の分化や増殖に関与し,エナメル質および象牙質など硬組織の形成に関連する可能性が考えられた。一方,TAZ蛋白は鐘状期切歯歯胚において細胞の分化や増殖に関与することが示唆された。