第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月18日(月) 08:30 〜 15:50 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P3-3-26] 口腔と腸管の免疫ネットワークによる歯周病の病態形成機構

〇永尾 潤一1,2、中上 昌信1、岸川 咲吏1,2、豊永 憲司1,2、加地 英美1、岩沼 青葉1、根来(安松) 香奈江1,2、田﨑 園子1、田中 芳彦1,2 (1. 福歯大 機能生物 感染生物、2. 福歯大 口腔医学セ)

キーワード:微生物、獲得免疫、細菌

歯周病は口腔内のデンタルプラーク中の歯周病原細菌が原因となる炎症性の疾患であり、歯を喪失する最も大きな原因となる。歯周病は、糖尿病や関節リウマチなど全身性の疾患に関わることが報告されており、社会的関心が高くなっている。近年の解析により、歯周病の病態形成には口腔内の歯周病原細菌に対する宿主の免疫応答、特にサイトカインIL-17A産生を特徴とするTh17細胞による宿主の免疫応答が関与することが報告されている。しかしながら、歯周病の病態形成に関わるTh17細胞による免疫応答を誘導する抗原は何なのか、免疫応答を誘導する場はどこなのか、Th17細胞の制御機構は不明な点が多い。本研究では、歯周病の病態形成機構を、歯周病原細菌に対する口腔と全身におけるTh17細胞を介した免疫応答に着目して解明することを目的とする。歯周病原細菌は、口腔から経消化管的に腸管に到達することが知られている。我々は、歯周病との関連性が高い歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisを腸管に投与したところ、P. gingivalis応答性Th17細胞が腸管を介して全身性に応答することを明らかにした。また、P. gingivalisを腸管投与後に口腔に感染させたところ、Th17細胞が腸管から歯周組織に遊走することで集積し、歯周病の病態が悪化することが明らかとなった。さらに、腸管を介した全身性のTh17細胞応答には腸内細菌叢が関与することを見出した。以上のことから、歯周病の病態形成には、腸内細菌が制御する腸管粘膜免疫系が関与し、Th17細胞による腸管と口腔の免疫ネットワークにより制御されることが示された。