第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

アップデートシンポジウム10

「異分野融合研究による歯科イノベーションへの挑戦」

2023年9月18日(月) 08:30 〜 10:00 C会場 (133講義室(本館3F))

座長:松下 祐樹(長大 院医歯薬 細胞生物)、Hara Satoshi Emilio(岡大 院医歯薬 歯先端研セ)

09:42 〜 09:54

[US10-07] 歯科補綴領域における幹細胞研究の可能性 〜歯の再生を目指して〜

〇新部 邦透1 (1. 東北大 院歯 分子・再生補綴)

キーワード:再生医療、MSCs、補綴治療

近年、治療技術や歯科材料のめざましい進歩によって、補綴治療に用いる材料がより生体に近い物性になる状況下、歯科医師も患者もさらなる機能性や審美性の満足を追求する時代となった。これを背景に、補綴歯科治療においても再生医療を取り入れようとする機運は高まりつつある。
2007年にはマウスの歯胚細胞を一度上皮と間葉に分離し、再度三次元培養することで、上皮間葉相互作用を誘導し、機能的な歯を再生する技術(器官原器法)が報告された。器官原器法は歯のみならず歯周組織も再生可能な画期的な方法である。しかしながら最初の報告は、胎仔由来の歯胚細胞を用いていたため、成体中に有効な細胞ソースが存在するかは不明であった。近年になり、生後のマウスや犬の歯胚においても器官原器法で歯を再生する事が可能となった。また、iPS細胞を器官原器法に応用した歯の再生も報告されている。しかしながら、上皮・間葉両側を成体由来の非歯原性細胞から1つの再生歯を誘導する事は困難であり、今後の課題となっている。
再生医療の細胞供給源にはES細胞や体性幹細胞が知られており、骨髄中には体性幹細胞である間葉系幹細胞(MSCs)が存在している。我々のこれまでの研究から、骨髄中のMSCsの発生起源の一部が頭頸部間葉組織と同じ神経堤由来であることを明らかにしている。さらにこの骨髄MSCsから神経堤幹細胞関連遺伝子を高発現する“細胞塊”を作製することに成功しており、頭頸部間葉組織の細胞源として着目している。
一方で、我々はiPS細胞から発生段階を模倣した新たなエナメル芽細胞誘導方法を報告している。この誘導方法は、3ステップのエナメル芽細胞の発生段階を模倣しており、試験管内での石灰化までも確認している。各分化段階の上皮系細胞は、再生医療の細胞源として応用が可能ではないかと期待している。