一般社団法人日本学校保健学会第67回学術大会

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小学生への脱タバコ教育の現状と展望

コーディネーター:稲垣幸司(愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科,子どもをタバコから守る会愛知)

[SY4-2] 小学生への脱タバコ教育の現状と展望―小学校児童への脱タバコ授業での歯周病,加熱式タバコに対する認識と社会的ニコチン依存度の関係からみた現状

稲垣幸司1, 増田麻里2 (1.愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科,子どもをタバコから守る会愛知, 2.愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科,子どもをタバコから守る会愛知)

キーワード:小学生 脱タバコ 加熱式タバコ

Ⅰ.はじめに
 2016年歯科疾患実態調査1によると,歯肉に炎症が限局した歯肉炎罹患率は,小学校高学年から中学生(10~14歳)は24.6%で,15歳以上で30%を超え,歯周組織全体に炎症が波及する歯周炎罹患率は,年齢が上がるにつれて増加傾向にある.さらに,20 歳未満がタバコによる健康障害を受けることにより,タバコ煙が最初に通過する口腔にも,歯周病や口腔がん等のリスクが増え,歯周病罹患者の増悪にも繋がる可能性がある2, 3
 前述のように,本邦では加熱式タバコ(Heated tobacco products: HTPs)使用者が急増し,その中でも特に,IQOS(アイコス,フィリップ・モリス・インターナショナル,USA)の喫煙率は,2015年の全国販売開始時0.2%であったが,2017年3.0%,2019年11.3%にまで急増してきている4
Ⅱ.小学校児童への脱タバコ授業の取組
 子どもをタバコから守る会愛知では,愛知県内の小中学校児童を対象に,脱タバコ教育の出前授業を実施してきている.授業の内容は,喫煙や受動喫煙による健康障害,ニコチンの依存性,喫煙による勉強や運動への影響,歯周組織に与える影響およびHTPsによる健康障害である.その際,歯周病やHTPsを含めた喫煙に関する認識と社会的ニコチン依存度について,授業前後で質問票により評価している.なお,社会的ニコチン依存度は,加濃式社会的ニコチン依存度調査票(Kano Test for Social Nicotine Dependence: KTSND)の小学校児童に対して評価可能なKTSND
調査票小学校高学年標準版(KTSND-youth)を用いている.また,小学校児童のHTPsに関する認識について,加熱式タバコ認識度調査票小児版(HTPs Awareness in Children: HTPsAC)を試案し,評価を始めたところである.
 このような小学校児童への脱タバコ授業により,著者らの報告も含めて,将来の喫煙や喫煙経験予想の減少が報告されている5‒7
 したがって,今後は,未成年者のHTPsも含めた喫煙を防止するために,小学校の段階でのHTPsを含めたタバコの健康障害に対する正しい脱タバコ教育が急務である.

参考文献
1. 厚生労働省:平成28 年歯科疾患実態調査結果の概要.https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-02.pdf
2. 稲垣幸司,南崎信樹:喫煙と歯周病.歯周病悪化の原因はこれだ.第1版.デンタルダイヤモンド社,東京,2017;p8‒20.
3. WHO: WHO Monograph on Tobacco cessation and oral health integration.
https://www.who.int/tobacco/publications/smoking_cessation/monograph-tb-cessation-oral-health/en/
4. Hori A, Tabuchi T, Kunugita N: Rapid increase in heated tobacco product (HTP) use from 2015 to 2019: from the
Japan ‘Society and New Tobacco’ Internet Survey( JASTIS).
https://tobaccocontrol.bmj.com/content/early/2020/06/05/tobaccocontrol-2020-055652
5. 原めぐみ,田中恵太郎:喫煙・受動喫煙状況,喫煙に対する意識および喫煙防止教育の効果 佐賀県の小学校6 年生の153校7,585人を対象として.日公衛誌 2013; 60: 444‒452.
6. 生井エリナ,稲垣幸司,佐藤厚子,ほか:小学5,6年生の喫煙,受動喫煙に対する意識や脱タバコ講義の効果.日歯衛会誌 2013; 7: 30‒41.
7. 増田麻里,稲垣幸司,大矢幸慧,ほか:小学校5,6年児童の歯周病や加熱式タバコに対する認識と社会的ニコチン依存度の関係.禁煙会誌 2020; 15: 84‒90.