国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

災害・支援・経済発展——バングラデシュの事例

2024年11月10日(日) 12:45 〜 14:45 F304 (富士見坂校舎 304)

座長: 南出 和余(神戸女学院大学)

コメンテーター: 南出 和余(神戸女学院大学), 狩野 剛(金沢工業大学)

14:15 〜 14:45

[2D208] マイクロファイナンス機関による災害時相互扶助サービスの満足度向上施策:バングラデシュにおけるランダム化比較試験

*倉田 正充1 (1. 上智大学)

キーワード:災害支援、相互扶助、マイクロファイナンス、ランダム化比較試験

本研究では、日本の国際協力事業であるバングラデシュ国「金融包摂強化プロジェクト」で実施された災害時相互扶助サービスの満足度向上のための施策について検討する。本事業では、サイクロンの被害が著しい南部で事業展開する7つのマイクロファイナンス機関(MFI)と協働し、各MFIのオフィスから50㎞圏内にサイクロンの中心が侵入した場合にそのメンバー全員が緊急支援金を受給できる相互扶助サービスを新たに開発した。しかしメンバーがその支給条件を十分に把握できない、あるいは被災しても条件が満たされず支援金を受給できない等の理由で、サービスやMFIに対し不満を抱くリスクも懸念された。
 そこで本事業では、サイクロンが発生した場合に携帯電話のマップ上で支給条件の判定が確認できるアプリの開発と、同サービスの支援状況等を動画や写真で共有するSNSのサイトを開設し、これらを満足度向上施策とするランダム化比較試験を行った。具体的には、調査対象者2,900人を(1)アプリのみ利用できる介入群A、(2)アプリとSNSの両方を利用できる介入群B、(3)両方とも利用できない統制群の3群に村レベルでランダム割付し、2022年9月から2023年12月にかけてサービスを提供した。この間、3つのサイクロンが発生し、4つのMFIのメンバーに対して緊急支援金が支給された。
 分析の結果、サービスの満足度は非常に高く、特にSNSの介入が満足度向上に寄与したことが確認された。この要因として、仮にメンバー自身が緊急支援金を受給しなかったとしても、他の被災者への支援状況を知ることが連帯感の醸成やサービスの実効性の認識を促進した可能性がある。また緊急支援金を受給したメンバーにおいては、所属するMFIのサービス全体に対する信頼や満足度も向上しており、同サービスがマイクロファイナンスと並行して有効に機能することが示された。

パスワード認証
報告論文の閲覧にはパスワードが必要です。パスワードを入力して認証してください。

パスワード