国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

農業の国際開発:水田、桃栽培、花き栽培、シードコモンズ

2024年11月10日(日) 15:00 〜 17:00 F304 (富士見坂校舎 304)

座長: 西川 芳昭(龍谷大学)

コメンテーター: 西川 芳昭(龍谷大学), 杉原 たまえ(東京農業大学)

15:00 〜 15:30

[2D209] サブサハラアフリカ諸国(SSA)は500 年の欧米のくびきを離れ、2050 年までにアジア・アフリカ(AA)水田稲作圏を形成する

*若月 利之1 (1. 島根大学)

キーワード:サブサハラ・アフリカ、水田稲作、アジア・アフリカ協力、稲作農業のリスク戦略、アフリカ水田農法、500年の欧米のくびき、内発的灌漑水田開発

1. 研究の背景アフリカ諸国(SSA)は農業開発に苦戦している。しかし、水田稲作は例外的に持続的発展の中にある。どのような国際協力・生態環境・技術的要因が寄与したか?2. 資料・情報および分析方法FAO、USDA、ナイジェリアNAELS農業統計、英国際開発省/世銀支援によるGEMS4の乾・雨季のナイジェリア稲作統計(2016-17年)を比較検証した。近年の水田開発の進展はGoogle earth で解析した。本演者の1986-2019年のJICAや科研支援による現地調査とアクションリサーチ結果と対比した。アフリカ稲センターのSMART-IV(2009-2019)プログラムの成果も利用した。3. 得られた知見 (1) 生態環境からSSAの水田稲作ポテンシャルはアジアの約50%、5000万haで2.5億トンの籾生産が可能である。年間の稲作面積と米生産(籾換算)は1960年代の100万ha、350万トンから、2020年には220万ha、3100万トンとなり、籾生産は8.9倍に増加し、人口増加率3.9倍を上回った。(2) 栽培稲は1万年前、灌漑水田基盤は5000-7000年前に揚子江中流域で発祥し、3000年前までに日本を含むアジア全域に伝播し、地域特性に適応進化発展してきた。1000年前にはマダガスカルにも伝播・定着した。(3) しかし500年前に始まる欧米の奴隷貿易と植民地支配はSSA諸国の自立的・内発的な農業発展の機会を奪い、SSAの生態環境に適合する水田稲作は発展できなかった。(4) 植民地独立以降アジア・アフリカ(AA)諸国の協力関係が拡大した。協力の基盤は、1955年のインドネシアのバンドンAA会議(日本も招聘参加)にあると思われる。1961年から1975年にかけて、台湾が先駆的にSSA22カ国に灌漑水田稲作技術を大規模に移転した。その後日本、中国、韓国、インド、パキスタン、北朝鮮などが続き、AA協力が幅広く進化発展している。(5) SSA農民の自力による内発的灌漑水田開発技術(Sawah technology)は、SSA諸国と国際機関の適切な支援(例えばナイジェリアKebbi州 Rice Revolution)と組み合わされば、気候変動や水リスク、農地劣化リスク、病害虫リスク、市場変動や為替相場変動等の種々のリスクに対する基本戦略になる。

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