第55回日本脈管学会総会

講演情報

JCAA選考発表

JCAA選考発表

2014年10月30日(木) 09:00 〜 10:40 第4会場 (203会議室)

座長: 大倉宏之(川崎医科大学 循環器内科), 遠藤將光(独立行政法人国立病院機構 金沢医療センター 心臓血管外科), 濱野公一(山口大学大学院 器官病態外科), 陣崎雅弘(慶應義塾大学医学部 放射線科学)

09:00 〜 10:40

[JCAA-4] ホスホジエステラーゼIII阻害薬はcAMP-PKA経路を介した抗炎症作用によりアンジオテンシンIIによる腹部大動脈瘤形成を抑制する

梅林亮子, 内田治仁, 垣尾勇樹, 和田淳, 槇野博史 (岡山大学 大学院 医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学)

キーワード:Phosphodiesterase, Abdominal aortic anuerysms

【背景】アンジオテンシンII(AngII)の持続投与よる腹部大動脈瘤(AAA)形成の過程には,大動脈壁の炎症が重要であることが報告されている。今回我々は,ホスホジエステラーゼIII阻害薬(PDEI)であるシロスタゾールがAngIIによるAAA形成に及ぼす影響を検討した。【方法と結果】8-12週齢のオスのapoE欠損マウスに普通餌または0.1%PDEI混餌を与え,AngII(1000 ng/kg/min)を4週間持続投与しAAAの評価を行った。PDEIによって体重,血圧,脈拍,脂質への影響は認めなかったが,大動脈径の拡大(1.94 ± 0.16 mm vs 1.53 ± 0.17 mm),AAAの発生率(79 % vs 43 %)は有意に抑制された。組織においてはAngIIによる血管壁へのマクロファージの浸潤はPDEI投与群で抑制され,また大動脈のMMPの活性化も同様にPDEI投与群で抑制された。さらに,AngIIによる大動脈でのCcl2,IL-1b,Cox2,Spp1の遺伝子発現の上昇もPDEI投与により抑制された。次に,免疫組織学的検討により,ホスホジエステラーゼIIIは主に血管内膜に発現していることが確認された。そこで,血管内皮細胞におけるPDEIの作用機序の検討のためにapoE欠損マウスから血管内皮細胞を単離培養した。この培養血管内皮細胞においてPDEIは,TNF-α刺激によるCcl2,Icam-1の発現増加を濃度依存性に抑制し,Forskolinでも同様にこれらの遺伝子発現量の増加が抑制された。一方でこのPDEIによるCcl2,Icam-1の発現増加の抑制効果はPKA阻害薬H-89の共添加により無効化された。【結論】以上より,ホスホジエステラーゼIII阻害薬はcAMP-PKAを介した抗炎症作用により,腹部大動脈瘤形成を抑制することが示唆された。