第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(ポスター)

大動脈解離1

2014年10月30日(木) 15:20 〜 15:56 第8会場 (2Fロビー)

座長: 内田直里(土谷総合病院 心臓血管外科)

15:20 〜 15:56

[P-13-5] 緊急TEVAR術後の遅延性対麻痺に対しCSFDが著効した一例

土屋博司1, 遠藤英仁1, 西野純史1, 稲葉雄亮1, 野間美緒1, 窪田博1, 竹谷剛2 (1.杏林大学心臓血管外科, 2.三井記念病院)

キーワード:tuchiya, tuchiya

【はじめに】TEVARの重篤な合併症として脊髄虚血があり,術後患者のQOLを著しく低下させる。術後数時間から数日に発生する脊髄虚血は遅延性対麻痺と呼ばれ,危険因子は肥満,術中貧血,血栓症,長いセグメント,腹部大動脈瘤術後が報告されている。脊髄虚血の予防策としてCSFD(Cerebrospinal fluid drainage)を術前より挿入する場合もあるが,緊急症例ではCSFDを行えないことが多い。今回我々は緊急TEVAR術後に遅延性対麻痺を合併後,CSFDが著効した症例を経験したため報告する。【症例】78歳の男性。前胸部違和感を主訴に緊急搬送された。胸部造影CTで左血胸および縦隔血腫を伴う急性大動脈解離(Stanford type B)破裂と診断し緊急TEVARの方針となった。【手術】全身麻酔下にて手術開始した。Deviceは34mm径20cm長のGore TAG(Gore社製)を採用。留置部位は左総頸動脈分岐部末梢からTh9まで1本使用した。左鎖骨下動脈はCoil塞栓を行い,確認造影でendoleak認めず手術を終了した。【経過】術後18時間後より脊髄レベル(Th6-7)以下の異常感覚,痛覚低下,左下肢運動低下が出現し,神経学上脊髄腹側部障害による前脊髄動脈閉塞症候群が最も疑われた。術後20時間後にL4-L5よりCSFDを施行し,ナロキソン1mg/日を1週間,アリプロスト10μg/日を2週間,ソル・メドロール1000mg/日を3日間の投与を開始した。術後38時間後にはほぼ左下肢の筋力低下,異常感覚,痛覚低下は消失し,術後経過良好で第21病日で独歩退院となった。【まとめ】今回我々は緊急TEVAR術後に生じた遅延性対麻痺に対し,迅速なCSFDを行い独歩退院に至った症例を経験したため,文献的考察を加え報告する。