第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(ポスター)

動脈瘤1

2014年10月31日(金) 13:52 〜 14:22 第7会場 (第2練習室)

座長: 蔡景襄(JR仙台病院 外科)

13:52 〜 14:22

[P-26-5] 術前検査では確定診断に至らなかった炎症性腹部大動脈瘤(Inflammatory Abdominal Aortic Aneurysm: IAAA)の2症例

渡辺健一, 渋谷卓, 良田大典 (関西医科大学附属枚方病院 血管外科)

キーワード:Inflammatory AAA, Diagnosis

【はじめに】IAAAは,肥厚した瘤壁,動脈瘤周囲の著しい線維化,周囲臓器との癒着という特徴と微熱,腹痛,腰背部痛などの症状を伴い,CRPや血沈値の上昇を認めるとされているが,今回我々は臨床所見に乏しく開腹後に確定診断に至った2症例を経験した。症例1:65歳男性。身体所見,炎症所見を認めなかった。CTでは軽度の動脈瘤周囲の線維化を認めていたが,確定診断には至らなかった。中枢側のLanding Zoneがなく,若年であったため開腹手術を選択した。後腹膜を確認すると瘤前面に白色の色調変化を認め,IAAAと判断した。症例2:79歳男性。身体所見は認めず,一時的に炎症所見を認めたが,CTでは動脈瘤周囲の線維化は軽度であり,確定診断には至らなかった。Jaxtarenal AAAであり,EVAR不適と判断し開腹手術を選択した。後腹膜を確認すると瘤前面に白色の色調変化を認め,IAAAと診断した。【考察,まとめ】画像診断では大動脈瘤の周囲に前方から側方にかけての厚い軟部組織が特徴的であるが,臨床所見,画像所見から確定診断に至らない症例も少なくない。人工血管と動脈の吻合は炎症のない健常部分で吻合すべきであり,剥離を大動脈遮断に必要な最小限にとどめ,腸管・尿管損傷などの合併症を避けることが手技的に重要である。また術中に十分な剥離を行わなくても人工血管置換術後には周囲の軟部組織が縮小化することが知られている。ステントグラフト治療も良好な結果報告が散見されるが,長期成績は不明である。開腹術を選択し炎症による尿管狭窄を解除できるとの報告もあり,良好な結果を得ることも可能であると考える。