第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター3群 周術期の看護①

Fri. Sep 27, 2024 11:15 AM - 12:15 PM ポスター会場 (展示ホール)

座長:松沼 早苗

[ポスター3-6] 前立腺癌術後の臥床体位と疼痛に関する検討

古澤 翔大, 藤澤 真弓, 木原 直子, 山本 友紀, 本多 俊治, 佐藤 文憲, 秋田 泰之, 岩崎 和範, 局 隆夫 (別府湾腎泌尿器病院)

【緒言】ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)は前立腺癌の標準的術式として広く行われている。RARP後は翌朝までベッド上安静が一般的であるが、臥床体位と疼痛に関する研究は乏しく、ランダム化比較試験(RCT)の報告はない。 【目的】セミファーラー位が仰臥位と比較してRARP術後の疼痛を軽減するかRCTにて検討した。 【方法】A病院にてRARP前に同意が得られた60例をセミファーラー位(SF)群と仰臥位(S)群に各30例を無作為に割り付け、帰室後から翌朝までの術後疼痛と呼吸状態について前向きに検討した。術翌朝と退院前の2回、術翌朝までの疼痛についてフェイススケール(FS)、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)で評価し、術翌朝までの鎮痛剤使用量にて客観的な評価とした。呼吸状態は咳重症度VAS(Cough VAS)、修正ボルグスケール(BS)にて主観的評価とし、長時間用パルスオキシメーターを用い連続的にSpO 2 を測定し客観的評価とした。サンプルサイズ の設定(有意水準0.05, 検出力0.8)と解析(unpaired t/Mann-Whitney U検定)は統計ソフトRを用いた。本研究はA病院の倫理委員会の承認(倫受-7)を得て行なった。 【結果】患者背景、周術期成績において2群間に差はなかった。術後疼痛はFSにおいてSF群(中央値: 翌朝2/退院時2)がS群(中央値: 翌朝3/退院時3)と比較して有意に良好であった(翌朝p=0.008, 退院時p=0.003)。VASにおいてSF群(中央値: 翌朝2.9/退院時3.4)はS群(中央値:翌朝4.8/退院時6.0)と比較して術翌日の評価で有意差がなかった(p=0.058)が退院時の回答では有意に良好であった(p=0.014)。鎮痛剤使用量、Cough VAS、BS、SpO 2 に有意差はなかった。 【考察】FS及びVASの結果からRARP後のSF位はS位と比較して疼痛が軽減する可能性が示唆された。術翌日のVASで有意差が検出できなかった原因として、患者は比較的高齢者(平均70才)で術翌朝は意識レベルが平常時まで回復していないことや気分不良のために痛みを数値化することが困難であった可能性があると考えた。高齢者において長時間全身麻酔後の早期に疼痛を評価するにはVASよりも簡便なFSが実態に即しているのかもしれない。また一定量のアセトアミノフェンを持続投与していたことから、疼痛は自制内の患者が多く鎮痛剤使用量に差がなかったと考えられた。呼吸状態についてはSF位とS位は同等と考えられた。【結論】RARP後のSF位はS位と比較して呼吸状態に差なく疼痛が軽減することから、術後の臥床体位として望ましいと考えられた。今後さらに多施設での検討が進み、術後の適切な臥床体位の理解とその普及が望まれる。