第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演26群 健やかに生まれ・育つことへの支援②

2022年11月9日(水) 12:40 〜 13:40 口演会場2 (303)

座長:松井 弘美

[口演M-26-4] 神経難病専門病院における成人移行期医療支援の意識調査

-小児科経験の有無による比較-

戸田 阿梨沙, 工藤 芽衣子, 稲田 るり子 (東京都立神経病院)

キーワード:成人移行期医療支援、意識調査、小児科経験の有無

【抄録】
【目的】小児科経験の有無によって成人移行期医療支援(以下移行期支援)に対する認知度や必要性、必要な支援の有意差の有無、医療者間の受け入れ状況について分析を行うことを目的とした。【方法】A病院医師、看護師等のスタッフへアンケート調査を行った。調査期間は20XX 年9 月から20YY 年2 月。単純集計及びX2 乗検定を用い5%を有意水準とし、データ分析を行った。A 病院倫理委員会の承認を受けアンケートの回答をもって同意を得た。【結果】300名に配布し181 名からの回答を得た。(回収率60%)『移行期支援の知識』は小児科経験ありのほうが有意に高かった(p=0.001)。それ以外の項目に関して有意差はなかった。『必要性』では「疾患に対する適切な医療ができる」と意見があった。その中でも小児科経験ありは具体的な内容であった。小児科経験なしは同等で「小児科の負担がかかる」と意見があった。『患者家族へ必要な支援』は「医療者間の連携」「病状・経過の引継ぎ」『難しい支援』は「家族への自立支援」が多かった。『受け入れ状況』は「どちらともいえない」を選択し、自由意見では「個別的な対応が必要」と回答した。【考察】『移行期支援の知識』は考える機会がなかったことが有意差につながった。一方、『必要性』では有意差はなかったが、具体的な内容に関しては小児科経験の有無による認識の差は大きい。そのため移行期支援チームから啓発活動や問題点を共有することが重要である。『難しい支援』では家族が患者の体調管理をしたいという気持ちが強く、医療者に対して家族からの要望が多い経験があり、その結果が反映された。そのため幼少時より、家族へ移行期支援の必要性の説明を重ね、準備を段階的に進めていく必要がある。また、そのような経験から患者家族の対応に成人医療者側は不安があり、患者家族の対応に関する不安を解消していくことが重要である。『受け入れ状況』について神経難病患者は医療的ケアや発達障害があり、簡単な移行は難しく「どちらともいえない」を選択したといえる。そのためにもシステム構築の際に画一的な対応ではなく、個別的な対応ができるようにする必要がある。また多職種が参加したチームとして協働していくことで、患者家族と成人科医療者の受け入れ体制、心理的準備を整える環境を作る。その上で双方の抱く困難感を解消しシームレスな移行を実現していく必要がある。