第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演38群 認知症者の看護

2022年11月9日(水) 12:40 〜 13:40 口演会場5 (103)

座長:千田 睦美

[口演M-38-3] 院内サロンの効果的な活用による認知症患者の行動・心理症状への影響

舩本 唯男, 林 久恵, 田中 明美 (安田病院)

キーワード:認知症、行動・心理症状、院内サロン

【抄録】
【目的】一般急性期病棟に入院中の認知症患者がサロンを利用することで、行動・心理症状に及ぼす影響を明らかにする。【方法】一般急性期病棟の認知症ケア加算対象患者で、治療に支障をきたさない患者が対象。(データ収集方法)サロン利用者はコロナウイルス対策により定員は最大8 名、研究者または認知症ケアチームメンバーが選定し、担当看護師がサロンへ誘導する。サロンチェック表を用いて利用時間を記載する。サロン利用初日と1 週間後に認知症困りごと質問票で評価する。評価は質問票25 項目で行動・心理症状の重症度と負担度を0 ~ 5 点の6 段階で行い(最大125 点)、得点が高い方が重症度は高くなる。(データ分析方法)サロンの延べ利用者数を集計し、利用率を出し運用状況を評価する。院内サロン利用日数と評価日の集計をし、利用初日と利用後の質問票評価での重症度・負担度の合計点数と過活動・低活動・生活関連に分類して集計、サロンの利用により、行動・心理症状に変化が生じたかを分析する。【結果】認知症ケア加算対象者延べ444 名のうち、サロン利用者は延べ198 名(44.5%)であった。一日のサロン利用者数は2 ~ 8 名で、平均4.9 名であった。ウイルコクソン検定結果より、質問票の重症度は平均値10.95 点から5.86 点へ有意に減少、負担度も平均値9.13点から4.77 点と有意に減少した。重症度・負担度ともに過活動・低活動・生活関連の平均値においても全て有意に減少した。【考察】サロン利用により質問票の全カテゴリーで有意に減少し、サロンの効果を数値的に評価することでサロンの効果が明らかになった。これは、リビングのような空間や日常生活に近い環境の中で入院生活を送ることにより、生活リズムが整い、社会性の維持が図れ、見当識障害予防に繋がっていると考えられる。サロン利用率44.5%の結果から、一般急性期病棟の病床回転率や病状によりサロンを活用できない場合がある。また、事前にサロン利用対象者を決めていても、スタッフの業務状況により低活動やADL が低下している患者のサロン利用の優先順位が下がり、過活動患者を優先する現状があると考える。今後、更に利用率を上げられるよう過活動のみならず、低活動やADL が低下している患者の利用を増やし、一般急性期におけるサロンの有効活用をし、認知症患者の行動・心理症状の発症や悪化の予防に繋がっていくと考える。