第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演5群 精神看護②

Tue. Nov 8, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 口演会場2 (303)

座長:鈴木 美央

[口演M-5-4] 強度行動障害患者の特性を捉えた行動制限最小化への取り組み

小池 治, 網井 智子, 金城 圭, 木村 朴, 陶山 満男, 橘 敏子 (東京都立松沢病院)

Keywords:強度行動障害、行動制限最小化、長期入院、チーム医療

【抄録】
【目的】A 病棟は、重度知的障害や心理発達の障害をベースに強度行動障害を呈する患者が入院している。医師と看護師が強度行動障害患者の特性を理解し、患者が関心を示すことや心地良さを感じられる支援を行った結果、行動制限最小化を図ることができたので報告する。【方法】⑴ A 病棟の患者19 名の基本情報から強度行動障害および行動制限について調査した。⑵ 大声や怒声、他者への粗暴行為により療養生活上の開放化が困難な患者を対象に、日常生活行動や性格特性などをアセスメントした。特に、障害特性を理解するために患者の好きな事や嫌な事、困っている事等を情報収集し、医師や看護師が、毎日観察した情報を漏れなく共有した。⑶個別的な介入は、患者が感じる生活の難さを軽減し取り除くことに重点をおき、患者が適切に対処できるように支援した。倫理的配慮は、当該施設の看護部倫理審査会の承認を得た。対象患者と家族に、研究目的、方法、結果の公表について説明し同意を得て実施した。【結果】対象患者は全員男性で、平均年齢49 ± 12.6 歳、平均入院期間は5,165.3 ± 4,872.5 日であった。主病名は統合失調症が約半数を占め、次いで知的障害、心理的発達の障害であった。強度行動障害には7 名が該当し、隔離室使用6 名中5 名に強度行動障害があった。患者の多くは些細なきっかけから過去の嫌な記憶を思い出し、大声や怒声と他者への粗暴行為に至る問題を繰り返していた。隔離室使用患者の障害特性を共有し、患者と正面から向き合い、困っている事や嫌な事を確認し、個々の行動を分析、アプローチした。日々孤独感が強い患者には、好きな話題や音楽やDVD 等で気分転換を図り、手をつなぎながら側に寄り添った。患者は安心感を得られると落ち着いて過ごせるようになり、1 名の開放時間は延長され、隔離処遇無しの患者は4 名であった。【考察】強度行動障害患者の特性を理解し、常に医療者間で情報を共有したことは医療チームの一体感を生み、患者の安心感や信頼感に繋がった。また、人としての温かさを感じられる対応は、患者の嫌な思い出から派生するタイムスリップ現象を率直に受け止めるために有効であったと考える。医療チームは、常に行動制限による心的外傷と人権擁護に配慮し、非言語的または怒声、粗暴行為を受け止め、患者対応に齟齬が生じないようにアプローチすることが重要である。