第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

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ポスター

ポスター10 群 患者の意向を尊重し、支える

Sat. Sep 30, 2023 1:15 PM - 2:15 PM ポスター会場 (イベントホール)

座長:高橋 奈智

[ポスターO-10-2] コロナ禍で周手術期に状態が回復せず緩和医療へ移行した患者の家族が抱える後悔と辛さを支えた一例

秋田 奈々, 畠山 明子 (淀川キリスト教病院)

Keywords:がん、緩和ケア、COVID-19

【目的】コロナ禍で術後長期間のICU 入室の末に、緩和医療へ移行した患者の家族が抱える後悔と辛さに対する関わりを考察し、家族のケアに効果的であったかを明らかにする。【方法】食道胃接合部癌術後の患者が緩和医療へ移行する場面での家族への関わりについて、診療録・看護記録・カンファレンス記録を抽出し考察した。本研究は所属施設の倫理委員会の承認(第2022-082 号)を得て実施した。【結果】患者A氏80 代女性。次男キーパーソン。A 氏は術後約1 ヶ月までICU に入室し一般病棟に転棟した時には衰弱は著明で、頻回な喀痰吸引を要していた。呼吸苦の訴えが強く「もう死にたい、頑張れるかわからない」と話した。次男はA 氏の挿管中の姿や一般病棟での苦痛な表情を見て「僕が手術を勧めた、母に申し訳ない」と辛さを話した。医療者間で病状の改善は厳しく、呼吸苦の緩和にはモルヒネ投与が必要と判断された。これまでのA 氏と次男の頑張りを労い、病状と苦痛緩和の方法、大切な時間を次男と穏やかに過ごす方針を提示した。A 氏の意向もあり、「母が楽になるのであればお願いします」と次男も了解した。モルヒネ投与でA 氏の苦痛は緩和され穏やかな表情が見られる時間が増えた。面会制限がある中、次男とケアできる時間の確保に努めた。次男はA 氏の状態を見て「このまま家で看れないか」と語ることもあったが、衰弱は進んでいて、自宅療養は次男の負担が大きく、よい看取りになるとは考えられなかった。次男がA 氏に声をかけたり、「今日も楽そうですね」と言って面会される時間を支えた。次男は最期の時に「最期は穏やかでした。ここで過ごせて良かった。」と語った。【考察】高齢者が積極的治療を受ける機会は増えており、合併症を負うリスクは高い。本事例のように予期せぬ経過に家族は後悔や自責の念が強くなる。また、本事例はコロナ禍で患者につき添えず、家族の苦悩が強まっていた。看護師は限られた時間で患者と家族を繋ぎ、患者の症状が緩和されている姿を見せて次男が安心できることで、家には帰れなかったが次男の苦悩が和らぎ、A 氏を看取れる看護を提供した。コロナ禍でも家族が最期まで心理的には患者と共にいると感じられるケアの大切さを経験した。