第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演14群 高齢者、認知症の人の看護①

2023年11月8日(水) 13:15 〜 14:15 第9会場 (G316+G317)

座長:長瀬 佐知子

[口演Y-14-3] 再入院を経験した独居の高齢慢性心不全患者の思い

―生活指導を受けた患者の語りから―

柳澤 拓也, 中島 好枝, 柳澤 絵美, 市川 奈実季 (長野赤十字病院)

キーワード:再入院、独居、高齢慢性心不全、生活指導、思い

【目的】A病院循環器病センター(以下A病院)では高齢慢性心不全患者のセルフケア能力を向上させるために生活指導に取り組んでいる。高齢者の特徴として長年培ってきた価値観、信条や生活習慣があるため、よりその人らしさを尊重した支援が求められる。独居の高齢者は家族からのサポートを受けづらく生活習慣が悪化しやすい特徴があるため、よりその人の生活習慣に合わせた生活指導が必要であると考える。独居の高齢慢性心不全患者にも生活指導を実施しているが再入院をする事例を経験しており、生活指導内容がその人らしさを尊重していないのではないかと考えた。そこで再入院を経験した独居の高齢慢性心不全患者が生活指導内容に抱く思いを明らかにすることとした。【方法】65歳以上の独居の高齢慢性心不全患者で認知症の既往がなく自宅で生活し、調査期間中にA病院に再入院した患者を対象に半構成的面接を実施した。対象者が生活指導内容に抱く思いを語った内容からコードを抽出、カテゴリー化し分析した。本研究はA病院看護部院内倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者の自由意思による同意を文書で取得し、随時撤回ができ不利益を受けないものとした。【結果】対象者は2名。B氏:独居の80代男性。日常生活での症状はなく、心不全による入院は2回。C氏:独居の80代女性。日常生活を送る上で症状があり、心不全による入院は6回以上。逐語録より38のコード、15のサブカテゴリ―より、《元に戻らない悲しさ》《自分の健康を第一で考えた》《支援を受けることに対する遠慮》《話を聞いてもらって嬉しい》《仕方がない》《心不全との戦い》《認めてもらえた喜び》の7のカテゴリーが抽出された。【考察】独居の高齢慢性心不全患者は、自分のことは自分でしたいという思いから《支援を受けることに対する遠慮》を感じていた。一方で《元に戻らない悲しさ》を感じ、《仕方がない》という諦めを持ちつつも、《心不全との戦い》に向き合っていた。また《認めてもらえた喜び》や《話を聞いてもらって嬉しい》と感じることは患者の支えになっており、《自分の健康を第一で考えた》ことにつながっていた。本研究で得られた結果から、独居の高齢慢性心不全患者の思いを意識した関わりが重要だと再認識した。様々な思いを感じながら疾患と共に生活しており、思いを理解して汲み取る関わりが生活指導内容の充実につながると考えられる。